漫画「砂の栄冠」単行本11巻感想

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砂の栄冠　11巻感想

（週刊ヤングマガジン2012年32号〜2012年42号）

3月6日に発売された単行本11巻の内容を紹介します。
ストーリーはセンバツ準々決勝をまるまる収録。

10巻の表紙も「シリアスな笑い」というかシュールさを醸し出してましたが、今回もぶっ飛んでる。
色々な意味で、もうまともな野球漫画じゃねえな。
１ヶ月後の4月5日に出る12巻もどんな表紙か楽しみ。

今回のエピソードをざっと紹介。

＊

第99話「夢」
「俺は夢なんか持たない！」
「俺の人生は他人が決める！」

第100話「前日練習」
七嶋、準々決勝を前にしたナインに「無欲でいこう」とリラックスさせる。
しかし、本心は勝つ気満々だった。

第101話「センバツ準々決勝」
猫をかぶるべく「ニャアアア！」と気合いを入れる樫野ナイン。
一方、スタンドには荒川ママの姿が。

第102話「準々決勝開始」
兼六学館は、工夫のない攻めしかしてこない。
七嶋は勝ったと確信する。

第103話「兼六の野球」
ただ打ってただ投げる、選手の能力任せの単純な野球。
兼六の野球を見切った七嶋だが、一方兼六監督の釘宮も七嶋の本性を見抜いていた。

第104話「猫　対　狼」
七嶋の黒い面を引き出そうとする釘宮だが、成功せず。
４回裏、樫野は得点チャンスをつかむ。

第105話「クロスプレー」
相手の送球ミスから１点もぎとった樫野。
スタンドでは、荒川ママが娘に「必ず七嶋をゲットできる」と励ますのだった。

第106話「覚醒」
七嶋は快調なピッチングで兼六を寄せ付けず。
９回２死まで追い込まれた兼六、ダメもとで背番号15のキャプテン風谷を代打に送る。

第107話「キャプテン対決」
技術はないが、とにかく食らいつく風谷。
「自分にはこんな純粋さがなくなってしまった」と迷う七嶋。
勝負はあっけなくファーストゴロに終わったが……。

第108話「大転倒」
ファースト鈴木の送球を受け取る際、風谷と接触して背中から転倒した七嶋。
整形外科で「右側の肋骨にヒビが入っており、明日の登板は無理」と診断される。

＊

兼六との試合そのものよりも、台詞まわしにインパクトがあった回ですね。
けっこうな反響を呼んだ（であろう）「俺は夢なんか持たない！　夢なんて怠け者の言い訳だ！」。
色々考えさせられますが、あくまでこれは漫画、エンターテイメント。
こういう考えもあるくらいに思っておきましょう。

兼六の釘谷監督は七嶋のバケの皮をはごうと躍起になってましたが、成功せず。
何度読んでも疑問なんですが、「皮はいだから、どうなの？」と思う。
七嶋が手強いピッチャーであることに変わりないと思うのだが。

そして、サワヤカキャプテンの風谷を見て、「甲子園に来てはじめて本物の純粋な高校野球に出会った気がする」。
そして「俺だってまだ　キラキラした野球少年の心は持っている」と少女漫画風七嶋になる。
猫になったり狼になったり乙女になったり、主人公は忙しいのう。

＊

あ、あと水着もあったな。……三田絵だけど。
「びきに」だったな。……三田絵だけど。
いかにヤンマガ読者の童貞が６割を占めるとはいえ（偏見）、あれでは使えませんな。

＊

スタンドに目を移すと、荒川ママが暗躍しています。
エンドランの親父を牽制したり、七嶋母に取り入ったり、やりたい放題。

さて、105話で水着作戦が失敗した娘を励ますわけですが、これがなかなか印象的。
一部の台詞を紹介すると
「人生って自分一人で考えたってわからないのよ　誰と会ってなにを話すか……それで決まるのよね」
「高校生の今が一番周りにいい男がいる時期なの　男の子600人の中から３年間じっくり選べる機会はもうないのよ」
「年を重ねるとまわりから男の人はどんどん減ってくんだから」
「見てごらんなさい！　５万人大観衆の中で光り輝いてる！　あんな男の人と出会う機会は一生ないわ！」

めちゃめちゃ欲丸出しなんですが、「チャンスを逃すな」と大事なことを言ってるわけですね。
プロに行くとなれば七嶋には女性が群がるわけで、荒川がゲットするには高校生のうちを狙うしかない。

それにしても、無為に高校時代を過ごした人間にはキツイ台詞ですねえ。
男にとっても、同世代の色んな女性と知り合う機会は社会に出てからないんだよな。
歳食ってから結婚できるのは魅力あるやつだけだしなあ……あ〜、やめやめ。

あと、荒川母娘が話すシーンでセンバツ大会歌「今ありて」が流れています。
これは単行本で追加されたと思う。
「今ありて」は、現実の甲子園でも５回終了後のグラウンド整備中に流れるんですが、
ママの台詞との対比が面白い。
新しい季節と新しい出会いを歌った「今ありて」をバックに、出会いの大切さを説く荒川ママ。今後もグラウンド外のキーパーソンになりそう。

＊

巻末企画「甲子園研究所」第11回
スポーツライターの田尻賢誉氏によるコラム。
今回のテーマは「名監督と名指導者の違い」。
監督として有能であっても、子どもを教え導くのがうまいとは限らない。
野球以外を教える事のできる指導者は限られている、という内容。
名監督かどうかを見抜くには、アポなしで練習風景を見るのがいいそうです。

田尻さんのペンは、批判する時が一番活き活きしてるなあ。最近はちょっと毒が過ぎてる気もするけど。
これからも、ホドホドに内情を暴露したコラムを書いてください。

＊

帯：「春のセンバツ開催！！　２ヶ月連続刊行！！」
つーことで、買いましょう。

＊

帯の裏面は「準決勝、チームのピンチに七嶋がサウスポーで緊急登板！　衝撃の第12巻は2013年4月5日（金）発売。」
（金）は曜日ですからね。