三田紀房「砂の栄冠」123話感想（週刊ヤングマガジン連載）

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今週の砂の栄冠　第123話「流れ」

（週刊ヤングマガジン2013年1月12日／7号
※2013年1月21日／8号にも収録）

単行本派の方はご存知ないでしょうが、今週のヤンマガは「手ブラ」問題で発売延期となりました。

※「手ブラ」問題……AKB48の河西智美の写真集の宣伝をかねたグラビアが何ページかあったが、その中で「白人の少年が河西の胸を手で隠している」というのが児童ポルノ法に抵触するのではないか、と判断された問題。

というわけで発売は21日にずれることになった……のですが、一部のコンビニ等では12日の時点で販売されてしまったらしく、「読んだ」という声もちらほら。
私はネットカフェで読む事ができました。
てなわけで、普段通りレビューします。
どうでもいいことですが、上記の問題、個人的には「いいんじゃね？」って思います。
ヤンマガって、もともと野郎向けのエロが売りの１つだし……。

※2012年1月21日追記
本日ヤンマガ8号が発売されましたが、内容は7号と全く同じです。
少なくとも「砂の栄冠」に関しては……。

＊

4回の表、苫大駒小牧の攻撃。
まず先頭の4番・古屋はキャッチャーフライでワンナウト。
この試合で初めて先頭バッターを出せませんでした。

＊

七嶋、続く5番キャッチャー福田に対しても「右手グラブでリリースポイントを隠す作戦」を実行。
福田は打たされショートゴロ。
イナがきっちりさばいてツーアウト。

もちろん観客は大うけ。「一気に三つ取ったれ！」と三者凡退を期待します。

＊

苫大駒小牧の名将・香野監督、この事態をかなり重く見ていました。
「ウチもプレッシャーを感じ始めた。8点リードの圧倒的優位を忘れかけている」

6番・亀井は初球をボール低めと判断。
しかしこれがストライクの判定。
ファールで追い込まれます。

＊

香野監督はある男に注目していました。
「それにしても　球審　若山さん」
「きょうは準決勝2試合　時間はたっぷりある
21世紀枠ミラクル樫野とスター七嶋の登場で超満員」
ここ、文章のつながりが一見してないのですが、後でつながります。

＊

「おまけに七嶋は前代未聞の左腕での投球
春はネタに乏しいマスコミは大はしゃぎ　大会関係者はウッハウハ
テレビの視聴率は上がるわ　明日の新聞は売れるわ　ビールもお土産も売れる！」
樫野のペナントとかね。

＊

「まさに……俺達がそうだった！　あの……異常なほどの熱狂と興奮の渦巻く試合を体験した！」
と、名将はかつて全国制覇した頃を思い出します。

＊

「そういった歴史に残る試合のすべてを仕切っていて……張り切らないワケがない！」
かつて、滝本さんは甲子園は試合のテンポが早いと七嶋にアドバイスしました（71話参照）。
簡単に言うと１日３か４試合消化しないといけないのと、関西出身で「イラチ」の審判が多いから。
しかし今日は甲子園２試合だけ。
つまり、球審・若山は長引かせてでもドラマチックな試合になるような方向にジャッジする可能性があるのです。

＊

若山のストライクゾーンに気づいた香野監督、
すかさずメガホンで「下を意識しすぎるな」と指示。

七嶋、そういった大人の思惑に気づく余裕はなく、ひたすら低めへ投げます。
３球続けてボールの判定。2-3のフルカウントに。

香野監督、「次の一球は必ず打て　この際凡打でアウトになってもいい」
なぜなら……
「見逃し三振をやられたら左投手として七嶋が完成する！
そして何よりもこの歴史的試合を捌きたい男がいる
4万大観衆の目を右手一本に釘付けにできる男が……」

＊

中立といえど審判も人の子。
滅多に立ち会えない試合で張り切っても無理はない。
少々低い程度ではストライクを取られる、そう香野監督は考えていました。
それにしても……これだけの洞察力があって、なぜガーソが凡将と見抜けないのか……。

＊

運命の６球目、インローにきたボールを亀井は見逃し。
七嶋も「低い」と観念しかけたが……

「ストライッ！」
真っ黒の若山球審が右手を上げた！
この漫画久々の「黒化」はアンパイアさんでした。
香野監督もやや黒くなりかけているぞ。

＊

七嶋、この試合初めての三振！
ようやく笑顔を見せます。

そして……バックスクリーンから生じた波が、樫野ベンチの三塁側へと流れていく（イメージです）。
香野監督、流れが移ってしまったことを確信します。

＊

これはビッグウェーブとなるのか？
それともガーソがせき止めてしまうのか？　以下次号。

＊

今回スポットライトを浴びた黒審判・若山。
高校野球の球審はボランティアなので、モデルを挙げるなどちょっとしづらいのですが……強いて言うなら、
名前のモデル　若林、小山（それぞれ2012年夏決勝の球審、一塁塁審）
ジャッジのモデル　桂（2007年夏決勝で、終盤低めボールの見極めが投手に厳しくなった……と言われている）
でしょうか。

今回のような話は高校野球通の中でまことしやかに囁かれてはいますが、
はっきり漫画にしたのは初めてじゃないでしょうか。
「面白ければ何でもネタにする」、三田先生らしいです。
あくまで漫画として楽しみましょう。