三田紀房「砂の栄冠」75話感想（週刊ヤングマガジン連載）

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砂の栄冠　第75話「宇宙空間の作り方」

（週刊ヤングマガジン2012年1月16日／7号）

今年のマンガ大賞に森高夕次・アダチケイジ氏による「グラゼニ」がノミネートされたそうです。
で、同じ「野球とカネ」をテーマにした砂の栄冠はノミネートされず。
しかし、ファンとして悔しいかというとそうでもなく。
ノミネートされなくとも、面白い漫画であること間違いないですから。
悔しいといえば、砂の栄冠の面白さを伝えきれる語彙のない自分のふがいなさかもしれん（大げさです）。
では今週のレビューを始めます。

＊

５回表、大阪杏蔭は三者凡退。
５回裏、樫野も無得点。
杏蔭がスミ１の１点を守ったまま、試合は後半戦へ。
甲子園はグラウンド整備の時間に入ります。

＊

「後半もこの調子で戦え」と毒にも薬にもならないアドバイスをするガーソ。
いつもなら七嶋以外は素直に受け取るのですが、今日はひと味違う男がいました。
グンがぽつりと「ガーソ、この試合勝つ気ないのかな」
「大阪杏蔭は粘らないし、充分勝てると思うんだけど」
２安打しているせいか、余裕の表情です。
グン、ついに覚醒したか？

＊

七嶋は、いい機会だと、ナインをベンチの隅にそれとなく集めます。
あからさまに話をしていると、ガーソに気づかれてヘソを曲げられるからです。
難儀なオヤジだよ全く。

＊

さかのぼること２月上旬。
樫野野球部は宝塚歌劇団を鑑賞しに行っていました（たぶん東京宝塚劇場）。
目的は、応援されるチームの作り方を勉強するためです。
全力で役を演じる歌劇団を見て、観客も引き込まれて応援する。
こうして劇場に甲子園と同じ「宇宙空間」が生まれるらしい。

しかし、なんでまた宝塚なんでしょう。
劇団四季でもシルクドゥソレイユでもなく……。
三田先生の奥さんがファンなのかな。
あと、費用はトクさんの１千万から出したんだろうけど、カネの出所はどう説明したんだろう。
「OBの方が好意で……」とでも言ったのかな。

＊

ヅカと同じように樫野は観客を引きつけなくてはいけません。
そのためにはまず攻守交代での全力疾走。
きびきびしたプレーを見せよう、好かれる高校球児を演じよう、と七嶋は声をかけます。
これまで頼れるエース、模範的なキャプテンを演じてきた七嶋。
ナインは彼に引っ張られてきましたが、対等に近づいたのか、七嶋の言う事を理解。

そして全員が真っ黒に。

ついに、ついにナイン全員が黒化するときが来たか……。

＊

６回表、さっそうと守備に散る樫野ナイン。
観客は好感度はグーンとアップ。
滝本さんや小林さんも満足そう。
全力疾走だけで反応あるか？　とも思いますが、まあ目の肥えた観客にはわかるってことでしょう。

＊

一方、大阪杏蔭の寺門監督も何かを察した様子。
「ここからは作戦変更や」
大阪杏蔭の猛攻が始まるのか？　以下次号。