三田紀房「砂の栄冠」99話感想（週刊ヤングマガジン連載）

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砂の栄冠　第99話「夢」

（週刊ヤングマガジン2012年7月9日／32号）

さて、「荒川の水着が！」というアオリだった先週。
訓練された三田漫画ファンなら全く期待してないでしょうが、はてさて。

＊

夜。
整体の佐藤さんのすすめでプールで泳ぐ七嶋。
昔水泳をやってたこともあり（24話参照）、華麗なターンを見せます。
何より一人の時間ができた事が嬉しい様子。

＊

と、そこへ邪魔者が。
当然ビキニを着た荒川です。
感想は、……、うん、三田先生頑張ったね。首から下はアシさんかもしれないけど。
高２直前にしてはまあまあの体型なのはわかった。
わかったから早くしまえ。
それ以上見せられると、メガ○トアか快○天で中和しないといけなくなる！

＊

ズギュウウウンと七嶋のハートを射止めた！　と荒川は一人で手応えを感じていましたが、七嶋は「あっそう」とばかりに水泳再開。
やはり三田絵では息子は反応しないか……。

＊

フィットネスから出ても、荒川は果敢にアタックします。
七嶋は「言うな！」と制しますが、一気に告白。
プロ野球選手になるかもしれない七嶋。
そんな有名人のお嫁さんになるのが荒川の夢らしいです。
「欲望に正直なヤツ」が勝つのが三田漫画のお約束と考えると、今後重要な役割が与えられるかもしれない。

＊

当然、七嶋は「結婚なんかするわけねえだろ」とスッパリ振ります。
それに、自分にはプロ野球の事など考える余裕はない。
ただ目の前の試合を戦うので精一杯だと。
また、肩や肘を故障すればその時点でプロなどない。
将来の保障などない、と荒川に言います。
実際には、故障してても回復を見込んで指名される場合もあります。中日の大野雄大とか、元横浜の森大輔とか（その後の事は言うな）。

＊

「先輩、若いんだから夢を持たないと」という、荒川のもっともな意見に対し、七嶋は、

「俺は夢なんか持たない」

「夢なんか持たない」

「夢なんか持たない」......

＊

久々に三田節炸裂。
三田節：俺用語。三田漫画に時折見られる言い回しのこと。
具体的には「世間じゃ○○だが、俺の中では××だ」と常識や定石をくつがえす発言を言う。

＊

「俺は夢なんか持たない
夢なんか怠け者の言い訳だ
俺の人生は他人が決める！」

他人とは、トクさん、滝本さん、甲子園の高校野球ファン……等のことでしょう。
彼らの期待するパフォーマンスを見せる。期待する結果を出してみせる。
願望を叶える機械に徹しているというのです。
なんだか歴史上の偉人みたいなセリフです。
一千万円をもらってそこまで決意したか……。

＊

荒川は、「じゃあ　私が決めます
先輩は私と結婚するんです」と食い下がりますが、一蹴。
まあ、よく頑張ったと思う。
あるかないかのチャンスにビキニを持って来ることも含めて。

＊

宿泊先に戻った二人。
荒川はテンションが上がったままらしく、同部屋のメガネ平井さんに今日の顛末をペラペラとしゃべるのでした。
その手の生々しい話に耐性なさそうな平井さんは真っ青。きっとコバルト文庫愛読者ですね。
「今は大事なセンバツの期間中なのに、主将に何て事を」……うん、常識的な指摘だ。
でも、常識にとらわれる人は三田漫画では……。

＊

一方、七嶋はカトキチとライター茅刈のメールをチェック。
茅刈が、次の対戦相手・兼六学館に勝てると断言する理由。
まず第一に、「トイレが汚い」。
それがどうして弱さにつながるのか。以下次号。

＊

さて、意外に内容の濃い回でした。
七嶋の超人ぶりがますます際立った回でしたね。
ビキニに反応しなかったのはまあ置いといて、自分を他人の願望を叶える器だとしか考えていないとは……。
その結末にあるのは何なんでしょうね。
かつて、クロカンでは

なにをしたいのか
それを決めるのは他人じゃない…
自分だ！

と言ってましたが、それは忘れよう。

次回はいよいよ100回です。

＊