三田紀房「砂の栄冠」95話感想（週刊ヤングマガジン連載）

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砂の栄冠　第95話「故意落球」

（週刊ヤングマガジン2012年6月11日／28号）

先週、ダブルプレーでゲームセットのはずが、球審が謎の指示を出していました。
「あのプレーは……、故意落球！」
「知っておるのか雷電」
というわけで、今週は前号のプレー解説からスタート。

＊

＜故意落球＞
平安時代、渡来人でありながら蹴鞠の達人である弧比良という男がいた。
彼は自在に鞠を操ることができ、特に地面すれすれまで落ちた鞠を触れずして頭上高くまで蹴り上げ、競技者の不意をつくことを得意としていた。
「弧比良のようにボールの扱いがうまい」という意味で故意落球という言葉が使われるようになった。
尚、現代の研究では弧比良は極細の糸を鞠につけていたという見方が大勢を占める。

民明書房刊『東アジアに球技の起源を見た！』より

＊

……失礼しました。
故意落球とは、次のようなケースで起こりうるプレーです。
・無死か１死
・ランナーが一塁にいる
つまり、内野ゴロゲッツーが起こりうる状況ですね。

ここで内野にフライが上がった場合、守備側が一旦ボールに触れたのに、「わざと」落とせばどうなるでしょうか。
一塁ランナーは二塁へ進塁義務が生じます。
しかしボールがグラウンドに落ちてからのスタートでは、二塁にはまず間に合いません。
守備側は楽に併殺を取れるでしょう。

この場合、意図的な併殺を取らせないため、審判は「故意の」落球が発生したと判断した時点でボールデッドを宣告。
バッターのみアウト、ランナーは元の塁に戻らせます。

セカンドのユウはライナーを取り損ねだだけであって、「故意」ではないんじゃないか？　という見方もありますが、心は読めないので「故意」かどうかを判断することはできません。
よって、一旦捕球しながら落とした場合は等しく故意落球が適用されるようです。

＊

このプレーに気づいたのは、七嶋と、トクさんとテレビ観戦していた遠藤マネ。
七嶋は当然としても、遠藤はさすが。きちんとスコアをつけているだけありますね。

＊

２死一塁でプレー再開。
七嶋はここで間をとりますが、一旦試合終了と思ってしまったナインは緩んだまま。
続く５番の代打・大野のポテンヒットで出塁。２死一、三塁。
完全に息を吹き返した帝城。
前川監督も熱いアクションが戻りました。ということは、先週は本当に打つ手がなかったらしい。
一方のガーソはご臨終状態。幽体離脱しかけている。
七嶋がそれを見て全く動じていないのが笑える。

＊

ここで考えられるのは足を使った攻撃。
七嶋は小泉きゅんに警戒を指示。
案の定、帝城はダブルスチールをしかけてきました。
キャッチャー二塁送球！　ショートのイナがカットしてバックホーム……のはずが、悪送球で楽に三塁ランナー生還。
これで３対２。

＊

こうなると、高校生ではなかなか気持ちが切り替えられません。
６番バッターにもヒットを許し、また２死一、三塁。
完全にマモノに支配された樫野ナイン（今週もアシさん気合いが入ってます）。
このピンチ、どう切り抜けるのか？　以下次号。

＊