グミ・チョコレート・パイン3
大槻ケンヂの小説「グミ・チョコレート・パイン」の「パイン編」を読了。わずか1週間足らずで3部作を読んでしまったことになる。
豪華な料理を一気にかきこんだ気分。味わいたいと思いつつも箸が止められないわけですよ。いや、面白かった。
多分わかりにくくなるけど、なるべくネタバレしない方向でこの作品の魅力を書いてみよう。
「グミ編」は93年、「チョコ編」は95年、「パイン編」は2003年に刊行。なんと2部と3部の間には8年も間があるのだ。それだけの時間ネタを熟成させていたせいか、「パイン編」は2部までと少し違ったおもむきを感じる。
主たるテーマはバンドでも恋でもなく、主人公・大橋賢三の迷走。友人との距離を感じ、無力感にかられ絶望し、己を見失い、自己嫌悪に潰されまくり、あげく現実から逃避する姿が描かれている。私も賢三と同じくウジウジしたところがあるので、非常に身につまされた。
が、そこはオーケン。暗くなりがちな物語に笑いのスパイスをふりかける手腕は健在。また、賢三が立ち直り自分の居場所を見出す過程も一筋縄ではない。
悲劇だか喜劇だかわからないノリは相変わらず。時にバカバカしく時に深い味わいのあるキャラクター達。血が通っているかのように、セリフの一つ一つがごく自然に感じられる。
個人的に一番ガツンときたのは第6章ラストのジーさんのセリフだ。
「賢三、結局お前は頭の中でしか世界を知らないんじゃ」
直後のアゴへの一撃より深い衝撃。そう、私も井の中の蛙なんだよな……活字ばかり読んで知ったような口をきいてる、しょーもないヤツ。
うちひしがれる賢三にジーさんはこう続ける。
「どれだけ映画を観ようと本を読もうと現実の痛みだけは体験しなければ絶対わからんのじゃ。そして現実の恐怖は……立ち向かわなければ乗り越えることができないんじゃ」
ジーさんにそう叱咤され、いくつかの出会いを経て賢三は外の世界へ扉を開く。
世界には挫折や失敗が待っていることだろう。しかし、まずはそれを受け止めなければ何も始まらないのだ。
そんな、ともすれば説教臭いメッセージや重い人生観が笑いに織り込まれてすっと頭に入ってくる。この語り口には脱帽するしかないです。
当初予定されていた自伝的作品を飛び越えた「グミ・チョコレート・パイン」。オーケンの投影だった大橋賢三も独立した存在になった感がある。
しかしレールから外れようとも面白いことに変わりはない。
装丁はちょっとエロですけど、皆さん手にとってみて下さい。
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グミ・チョコレート・パイン2
大槻ケンヂの小説「グミ・チョコレート・パイン」の「チョコ編」を読む。
「グミ編」と「パイン編」の橋渡しになるストーリー。「グミ編」を読んでいない方のために、あらすじをつらつら書くのは控えようと思う。
オーケンの筆はますますノリノリ。バンド結成をしたはいいものの、右も左もわからぬ主人公たち。彼らが少しずつその世界へ足を踏み入れていく様子がじっくりと書かれている。
ライブハウス(箱とか言いますね)の生々しさ、キレまくる演奏、熱狂する観客。
バカバカしさを感じる明るさも健在。バンド名をずらっと並べたところが一番笑った。脳のどこで考えるんだ、あんなの。
そして主人公があこがれを寄せる山口美甘子は別の世界へ。一種のダブルプロット(異なるストーリーの平行)になっており、見所が増している。
オーケンのうまいところは「単純なキャラクター」がいないこと。
単純バカのことではない。
極悪人もいなければ、100%の善人もいない。軽薄なキャラも時にはっとさせるセリフを呟き、変人の理屈に激しく納得させられたりする。
作者の登場人物への愛はまんべんなく注がれている。それは当たり前のようで、そうでもない。捨て駒的キャラを作らないのはすごく難しいことだから。
青春というくくりにはまらぬ素晴らしい小説。
さあ、パイン編を読むぞ。
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セブンソード 七剣下天山
映画「セブンソード」を鑑賞。
8月末に西安や上海を旅行した時にポスターを何度か見かけたので、日本でもやらないかと思っていたらすぐに来た。それだけの大作なのだろうとわくわくして映画館に行った。
【あらすじ】
1600年代半ばの中国。明王朝を打倒し建国間もない清王朝は、反乱分子を一掃するべく「禁武令」を発布。武術を学ぶものは家族にいたるまで皆殺しにしていった。
旧政府の役人・傅青主は、政府軍の蛮行に心を痛め、はるか遠方の天山に隠れ住む晦明大師に助けを求める。大師は四人の弟子と傅青主、そして軍の次なる標的・武荘からやってきた若者二人に鍛え上げた名剣七振りを授けた。
かくして集結した七剣士は、武荘を救うべく下山するのだった……。
いたってシンプルな勧善懲悪もの。
国家権力などの悪逆非道を、人知を越えた力を身につけた者たちが成敗する、という筋書き。
この映画での力とは、とてつもない破壊力を秘めた剣と剣術なわけだ。
で、見てどうだったかというと、正直手放しに面白いと思えなかった。
チャンバラのアクションシーンはテンポ良く、七剣士の活躍場面もそれぞれにある。悪役も実に憎らしくかつ強く、ぶった切るにふさわしい。
また「HERO」「LOVERS」と違い生身のアクションにこだわっており、それだけ刃の鋭さや重量感を感じられた。
バトルシーンは迫力充分だった。でも、それだけだとちょっと物足りないのだ。
理由はいくつかある。
それぞれの七剣士たちの背景や人物描写が不足気味で、少数の主役を除き誰が誰だかわからないこと。
夜間のアクションシーンが多く剣戟がわかりにくかったこと(単に私の動体視力がないのかな)。
物語の運びもわかりにくかった。特に会話の日本語訳がわかりづらく細部はよく覚えていない(頭悪いですか?)
やっぱりアクションといえど映画は人間ドラマですから。人間を描かないとアクションも「すごいけど、ただそれだけ」に終わってしまう気がします。
とはいえ二時間半の映画で七人のキャラクターを立てるのは無理があるのかも。
原作となった小説も読んでみようかな。

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グミ・チョコレート・パイン
ある人にしきりと勧められていた「グミ・チョコレート・パイン」のグミ編(3部作なのです)を読む。
著者は大槻ケンヂ(本名、大槻賢二)。
プログレッシブやアングラに影響を受けバンド「筋肉少女帯」を結成。それだけでなく作家としても知られ、様々なサブカルチャーにも詳しいマルチなお人である。
「グミ~」は大槻賢三という高校生を主人公にしており、おそらくは大槻ケンヂの少年時代をベースにした小説と思われる。
けど、そんな予備知識はなくとも充分楽しめます。
【あらすじ】
大槻賢三はさえない男である。
勉強ダメスポーツダメのダメダメ高校生。学校でも家でも存在感がなく、女の子とまともに話もできず、エロ本相手に妄想をたくましくする毎日。カルトな小説やB級映画鑑賞というほとんど理解されない趣味をひたすら追求し、孤独な高校生活を送っている。
退屈な日常を打破したい、けど方法も見つからぬ日々。そんなある日、ノイズバンドに感銘を受けた親友に誘われ、賢三たちはバンドを結成しようともくろむが……。
高校時代を思い出させる小説である。
それも青春を謳歌する、高校野球のごときサワヤカさとは対極にあるものを想起させる。
好きな子に思いを伝えられない、あのもどかしさ。
教室の中でひたすら目立たない自分。
他の人間とは違うんだ、という根拠のないプライド。
けれど何もできない悔しさを、ティッシュの中に吐き出すしかない日々(ああ~情けない)。
マイナスイメージの青春。だからこそ感情移入しやすい。作り物めいた恋愛物語とは違う、コンプレックスにまみれた十代の姿が確かにそこにあるから。
オーケンの小説としてのテクニックも見事。
決して難しい言葉を使わず、ノリとテンポを重視した文体(声に出してみるとすごく話しやすい)。
時にアホらしいほど大げさな比喩。時に考えさせられる語り。
注釈を用いたり筆者自身のツッコミが入るなど、普通の小説なら反則技の連発。けど面白い。
ひとたび手にしたならば、笑い転げてノンストップでラストまで行ってしまうことうけあいの傑作。
のっけから出てくる自慰描写に辟易しないなら、女性にもおすすめしたい本である。
続編の「チョコ編」を読みたくってたまらない。早く借りてこよう。
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