Tomy・はじめ「アンタたち治るわよ! ゲイ精神科医が心の病をぶったぎり」
2012年11月、講談社発行。
著者はおネェ系ゲイの精神科医。クリニックに常勤中。
漫画担当は「はじめ」さん。


アンタたち治るわよ! ゲイ精神科医が心の病をぶったぎり


タイトルはマツコデラックスか細木数子ばりに偉そうですが、
内容は親切でわかりやすい。
うつや不眠といった代表的な症例に、ずばり斬り込んでいっています。
専門用語や難しい言い回しはほとんどなし。頭に入りやすい。

「アテクシ」「ひゃだ~」といったオネエ言葉に抵抗がなければ、
気軽に読める面白い本だと思います。

◎構成
プロローグ
第1話 不眠症
第2話 うつ病
第3話 うつ病の治療
第4話 境界性パーソナリティ障害
第5話 娘の躁うつ病/家族相談
第6話 夫のうつ病/家族相談
第7話 パニック障害
第8話 適応障害
第9話 社会不安障害
第10話 甘えの場合
エピローグ


◎内容
自分の症状に該当しそうなエピソードだけ読むもよし、
最初から読むのもいいです。
コミック形式ですので、全部読んでもさほど時間はかかりません。

心の病は理解が難しいものですが、
なるべくわかりやすい例えを使い、読みやすくしています。
ところどころに笑いどころもあり、深刻にならずに読める、いい本です。

Tomyさんは自らがゲイとしてのアイデンティティに悩み、乗り越えた経験を活かし、
仕事のかたわらブログで悩み相談を受け付けている、との事。
(プロフィールから抜粋)

本を書かれるお医者さんは珍しくないですが、
ブログで相談に乗るお医者さんは、あまりいません。
非常に精力的な方だといえます。
(精力というとアレでナニな感じがするが)



◎うつに関するご注意
・うつ
・躁うつ(躁鬱)
・適応障害
・甘え

上記エピソードを読まれる方は、注意してほしいことがあります。
特に「自分はうつじゃないけど、うつについて知りたい」という人。うつ患者じゃない人。

うつなどの気分障害は、判別が難しい病気です。
上記エピソードの知識をもとに、家族や周囲の人の病名を決めつけてはいけません
それは、臨床経験を積んだ精神科医が行うべきことで、素人がやるものではないです。

あくまでも、苦しんでいる・悩んでいる人の心を少しでも理解し、寄り添うために読むべきです。

私を例にとります。
いわゆるうつ状態になり、大学病院の心療内科で「適応障害」と診断されました。
次に個人のメンタルクリニックに転院した際、「うつ病」と診断されました。

医師によって病名が違うのです。
それだけ判断が難しい。何せ、出血のように見た目でわかりませんから。
「甘え」や「なまけ」ともとれるわけですから。

いずれにしても、診断して病名を判断し、薬を処方するのはお医者さんの領分。
一般の読者は、うつ患者さんが「見た目健康そうだけど苦しんでいる」ことを理解し、
心が安らぐよう、気を配ってあげて欲しいと思います。


◎精神科医への誤解
41,42ページのコラム「精神科医への誤解」。
ここは漫画じゃないですが、お役立ちです。
読んでおくと、心療内科などで診てもらう際、お医者さんにピンボケした質問をせずに済みます。

誤解その1 精神分析ができる
ほとんどの精神科医は精神分析なんかできませんし、できても普通の診察ではやりません。
それどころか、「フロイトやユングなんてよく知らなーい」という精神科医だってたくさんいるのが現実ね。
精神分析って、今の精神科医療にはあまり必要なものじゃないからなのよ。
ただ奥が深くて面白いから、個人的に勉強されてる先生というのはいらっしゃいます。
どちらかというと、趣味や文学に近いものかしら。


夢の分析も普通やらない、との事。
そういえば、かかりつけの先生に「たまに悪い夢を見るのですが」と相談したら、
「あ~だいじょぶ。別に心配ない。眠りが浅いとよくある」とあっさり片づけられた記憶があります。

誤解その2 カウンセリングや心理検査をする
これらは、精神医学というよりは、心理学に分類されるもの。

誤解その3 人の心が読める
そんなもん読めるわけないじゃない。
空気も読めない精神科医だっていっぱいいるのに。



コラムの最後も重要。

精神科医にとって必要なことは
「この方は病気か、病気じゃないか」
「病気だったら何の病気か」
「どういう治療をすべきか」
という的確な判断ができることなのよ。
人の心のスペシャリストではなく、精神疾患のスペシャリストなんです。



◎まとめ
ぶったぎりというか、ぶっちゃけて書いてくれてるわかりやすい本。
心の病について知りたいけど、文字だけの小難しい本は読みたくない、という人におすすめです。
| 漫画・本 | 23:59 | comments (0) | trackback (0) |
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