「イラスト版こころの健康クリニック 新型うつを知る本」福西勇夫・福西朱美監修
2013年1月、株式会社アスペクト発行。
タイトルに「イラスト版~」とあるように、
見開きの1ページを文、1ページをイラスト、と文・画をセットにしているのが特徴。
本文デザイン・イラストは鳩貝一子(トリア)。


新型うつを知る本(イラスト版こころの健康クリニック)


短時間で読みやすい本ですが、一点ご注意。
「新型うつ」というのは造語であり、
「うつ」「非定型うつ」のように診断基準のある医学用語ではありません。


精神科医の大野裕先生は、「『新型うつ』という病気はない」と断言しています。
細川貂々&大野裕「ツレと貂々、うつの先生に会いに行く」

私のかかりつけ医の先生も、「『新型うつ』はマスコミと一部の不勉強な医者が広めたもの」と
言っていました。

池田暁子「思ってたウツと違う!『新型ウツ』うちの夫の場合」と同じく、
「うつ」理解のために読むなら注意が必要です。

◎ご注意の続き(長いです)
なぜタイトルに「新型うつ」を使うのでしょうか。
流行語を見出しにした方が売れるからでしょう。
本は読んでもらってナンボですから。

「非定型うつ」が「新型うつ」に近いです。
文中の「新型うつ」を「非定型うつ」に置き換えて読めるならば、おすすめします。
「新型うつ」を本当に存在する病気、と考える方にはおすすめしません。

「新型うつ」は、「なまけ病」「現代の若者の甘え」という文脈で使われることもあります。
うかつに口にすると、「うつ」の人を苦しめます。

「うつ」本人は、程度の差はあっても
「うつになってスミマセン」と自分を責めています。
新聞や週刊誌で「新型うつ」という見出しを見ただけでも、
「自分は病気じゃなくて、ただなまけているダメな奴では?」と考えてしまいます。

無理解な人に「お前、新型うつじゃねーの」と言われようものなら、
確実にダメージになるでしょう。

このタイトルに決めた株式会社アスペクトの編集担当さん、出版人としては正しいです。
人としては最低です。

監修者のお二人は精神科医とカウンセリングセンター長だそうですが、
よくこのタイトルでOKを出したものだと思います。

南青山でクリニックをやってるそうですが、
私はこの二人に診てもらおうとは思いませんね。
監修料と引き換えに、造語を広めるのに手を貸すような人たちなので。


◎構成
1章 「ワガママ」と新型うつはどう違う?
2章 従来のうつとは、ここが違う
3章 なぜ、これほど増えているのか
4章 診断と治療はこのように行われる
5章 職場や周囲はどう対応したらいいか


◎内容
くどいようですが、文中の「新型うつ」は「非定型うつ」に読み替えましょう。
内容そのものは、「非定型うつ」の理解の助けになる真面目なものです。

「これは、ただの甘えでは?」
第一印象で決めてしまうのは、危険です。
事態が深刻になる前に、本人から話を聞き、
医療も含めたサポートを考えてください。
(表見返し)

「本人から話を聞き」というのが大事です。
なぜかというと、「うつ」の病状は一人一人違うからです。

企業で管理職の方がこの本を読む場合もありましょうが、
本の内容はあくまで基礎知識と考え、
病んだ部下の話にしっかり耳を傾けて欲しいものです。

とはいえ、余裕のない時代です。
ただでさえクソ忙しいのに、耳を傾ける時間なんかねーよ、と
思われるなら、とっとと部下をポイして取り替えるのもよいでしょう。
合理化の面ではね。

ポイされる側に回ることも、覚悟した方がよいでしょうがね。


◎従来型のうつと非定型うつ
51pに比較表があります。

うつ非定型うつ
中高年の男性に多い若い世代の、どちらかというと
女性に多い
趣味や好きなことでも
やる気力が起きない
好きなこと、楽しいことは
元気にできる
朝から午前中の調子が悪い夕方から夜にかけて調子が悪い
自分を責める
自罰的傾向が強い
自分以外のもののせいにする
他罰的傾向が強い
誰かからの頼まれごとを
拒否できない
誰かから頼まれたことを
拒否できる
不眠過眠(不眠のこともある)
食欲不振過食

これは目安であり、病状は人によって少しずつ違います。
線で引いたように「うつ」「非定型うつ」に分離はできません。
両方の特徴を持つ人もいます。

一般の方が、この表をもとに家族や同僚・部下の病気を判別するべきではないです。
あくまで理解、患者への歩み寄りのために読んでください。

判断するのは診察した医師です。
うつの診断基準は91pに記載されてますが、膨大な専門書(DSM-4-TR)を抜粋してあるだけです。

くれぐれも、かじった知識で苦しんでいる人を傷つけないよう、ご注意ください。
| 漫画・本 | 23:59 | comments (0) | trackback (0) |
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