いくえみ綾大特集(ダ・ヴィンチ2017年5月号)
ダ・ヴィンチでいくえみ綾先生の特集記事が組まれてたので、読んでみました。


ダ・ヴィンチ 2017年5月号


38年間、ずっと第一線で描かれている漫画家さんですが、
あまり作品そのものについて語ったりしないので、実に貴重。

メインはドラマ化される「あなたのことはそれほど」ですが、
それ以外の数多くの作品についても触れられています。
「POPS」「I LOVE HER」など古い作品にも言及されており、これまた貴重。

このブログでは

・マンガ家人生を振り返る ロングインタビュー
・いくえみ作品のここが好き!(河原和音 他)

の2つから、印象的なくだりを拾ってみます。

◎マンガ家人生を振り返る ロングインタビュー
もともとプロットも立てないし、いきなりネームをやってしまう。
いつも、描きながら作っていく


「あなたのことはそれほど」も、
不倫をテーマにしようとしわけではなく、
キャラクターが結婚している設定にしたから結果的にそうなった、らしい。

読者に共感してもらおうと思って描くのは、
別マ時代で終わっている
私自身、マンガを読む時は共感を第一にしてはいない


私の描く女の人は『性格が悪い』って言われることが多いんですが、
自分ではそれがわからない
みんな本当はこう思っているよね?
っていうことを描いていたら、そう言われるようになってしまいました


マンガの女性像は少年漫画の「男の理想」みたいな女性しか知らなかったので、
先生の漫画を読んだときは、まあ色々衝撃でした。
『潔く柔く』で、カンナの大学の友達が、
カンナがいないところでめたくそに言うシーンが好き。

私はキャラクターに感情移入しないので、
悲しい話を描いている時にも全然平気


だからアッサリ逝ったりするんですね……。

(短編『プレゼント』は)何となく贖罪の意味を込めて描いた作品
私の学生時代にも似たような感じのことがあって


プレゼント……中学生の、容姿をきっかけにした「いじめ」が描かれている

子どもの時にはどうしようもなかったことが、
大人になってどうにかなったらいいな、
という願いを込めて描くのかもしれない


自分であんまり『これを言おう』というようなことは、
あまり考えないですね。
描いた、できた、うれしいなーぐらいの感じです


メッセージ性を強く出さず、読み手に委ねている。

(デビュー作『マギー』は)まるっきりくらもちふさこ先生のパクリです(笑)

(『POPS』の三島岳志は)高校の時に好きだった人がモデルです。
見た目は全然違うんですけどね


『POPS』の頃はファンレターをすごくたくさんいただきました。
段ボールにドンと届いて


それ以前は、受けるかどうかも特に気にせず描いていたそうです。

(100ページの読み切り『10年も20年も』)
それまでやってきた読者サービスを、この短編では全部やめた。
男の子同士の話だし、そんなに共感する人もいないだろうと思って描きました


10年も20年も……水泳部の男子と転校生(不登校だっけか?)の男子の束の間の交流を描いた話
ラスト、突然サブキャラだった女子のモノローグに切り替わる、意外な構成をとっている

18~19歳の頃、(太宰治の小説に)すごく読んでいました。
マンガのモノローグにも、太宰の影響はあるかもしれません


(いくえみ男子とは?)
わからないですけど……
描いていて楽しかったのは『おうじさまのゆくえ』の、
ちょっとバカっぽい感じの住田。
『トーチソング・エコロジー』のスーさんも、わりと描きやすいですね


好きな感じの男子を描いてはいるんですが、
かっこいい! と思ったりはしないですねえ。
王子様系の描き方がわからなくて……


(『プリンシパル』の和央は)
王子様として描き始めたんですけど、何かが違うなと(笑)


(『プリンシパル』のタイトルの由来は)
辞書をバーッとめくって最初に目に入った単語
主役を目指す子の話になるんだろうな、とは思いましたけど、
最後のセリフはこじつけです(笑)


北海道以外に住む気はない!
札幌にいたら、特に不便も感じませんし。


(北海道民は)こだわりが薄い(笑)
割と臨機応変というか
歴史がないからなのかもしれないですが、
変なしがらみもないし、自由な感じかなあと思います


(悩んだ時は)お風呂ですね
血行が良くなって頭が回る感じがして


自分では、普通に仕事をし続けてきただけ
大御所感は……どうやったら出るのかわからない(笑)


さすがに10代のことはよくわからない
私が描く10代は、“大人の中にいる10代”という感じがしますね


ずっと描いて、いつかなんとなく辞めていくような気がしますね

抜粋は以上です。

インタビュー全体を通して、
「現場一筋の職人」のような印象を受けましたね。

企業でいう管理職の出世コースに進まず、
ずっと現場で働いている
(漫画家として38年キャリアがあれば、漫画賞の選考委員になってもおかしくありませんが、
そのような話は聞きません)。

成果や作品について、自分からあれこれ語らない。
他人が好きなように評価してくれればよい。

思い入れやこだわりも特にない。
その場その時、いいと思うやり方で仕事をしてきただけ。

作品と同じで、つかみどころがない方だと思います。
別につかむ必要はないんですけどね……
(作品と作家は別物であり、
作品から作家の人となりを考えるのは『邪推』だと思う)

ただ1つ注文があるとすれば、
連載作品はぜんぶ終わらせて欲しいです。

現在連載6本。

太陽が見ている(かもしれないから)
G線上のあなたと私
私・空・あなた・私
おやすみカラスまた来てね。
そろえてちょうだい?
おいしいかもしれない

進行ペースを考えると、どれかが未完になりそうな気がして怖いな……。
ベルセルクよりは早く終わると思いますが


◎いくえみ作品のここが好き!
漫画家さん7人の寄稿文・イラスト
(くらもちふさこ/小畑友紀/楠本まき/くるねこ大和/堀内三佳/河原和音/中原アヤ)。

ここでは河原先生の寄稿文だけ抜粋します。

マンガを読んでいると、
その作品を描いている作家さんが透けて見えることがありますよね。
いくえみ先生は作品からご自身がまったく見えない!


主張も出てこないし、
そして先生のマンガは人を裁かない


先生の読み切りが大好きなんです。
なかでも惹かれるのは
『3-Dのクリスマスカード』
『My dear B・F』
『バラ色の明日』
『潔く柔く』


『3-Dのクリスマスカード』は、単行本の「わたしは夢みる少女」2巻に収録。
1987年発行なので、入手困難。
文庫化が望まれるところ。
他は、比較的入手が容易。

連載作で印象に残っているのは『I LOVE HER』
連載当時、参考書のように読んでいた


デビュー前には、
絵柄やコマ割りなども、作品から研究させていただいた


いくえみ先生は、私にとっての心の師匠

『かの人や月』の顕兄さんがとってもかわいいなと思ってました。
雑に扱われてるとこがかわいくて好きでした。
でもつきあいたいのは深町くんです

※顕兄さんと謎のマスコット?のイラストがある

先生のマンガは人を裁かないというのがまさにその通りでしてね。

『いとしのニーナ』という作品で牛島という高校生の男が出てきますが、
婦女暴行で退学、という事件を起こす悪党なんですね。
読者の共感ゼロです。

普通の漫画なら天罰がくだるような展開になるんですが、ならない。
あからさまな改心も、しない。

この不条理さがいくえみ作品の面白さのひとつ、だと思う。

あとは『潔く柔く』に出てくる、川口朝美の会社人の彼氏も印象的ですね。
重役かなんかの娘と結婚する・でも朝美との付き合いも継続する、とヌケヌケという。
どう考えてもゲス野郎。

が、スカッとした裁きがあるわけでもなく、静かに消えていく。
どうしようもないヤツではあるが、男というものの一面を描いていて、
漫画としては実に面白い。


◎リンク
雑誌の詳細は
【ダ・ヴィンチ2017年5月号】目次をチェック! | ダ・ヴィンチニュース

河原先生、いくえみ先生の作品の感想は
漫画・本 いくえみ綾
漫画・本 河原和音「素敵な彼氏」
漫画・本 河原和音「青空エール」
漫画・本 その他の河原和音作品
| 漫画・本::いくえみ綾 | 18:40 | comments (0) | trackback (0) |
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