2015,05,26, Tuesday
2011年9月、幻冬舎発行。画・細川貂々。
「ツレがうつになりまして。」の「ツレ」こと望月昭さんの子育てエッセイ。
「育児ばかりでスミマセン。」に続く、第2弾。
パパ、どうしてお仕事いかないの?
細川貂々さん・望月昭さんご夫妻の関連作品の感想は、
カテゴリからご覧ください。
◎内容
元うつ、現専業主夫の子育て日記。
「Web Magazine 幻冬舎」(Vol222~251、2010年4月~2011年8月)の連載記事
「ツレ&貂々のコドモ大人化プロジェクト」に加筆・修正したもの。
「ちーと君」こと、息子の千歳君は2歳から3歳7か月に成長。
子どもなりに主張し始める時期になり、
ツレさんもそれまでとは違った苦労を強いられることになる。
何より、2011年3月11日(金)の東日本大震災。
多くの人の日常が変わってしまいましたが、浦安市に住む一家の生活も激変。
首都圏での暮らしを避け、兵庫県宝塚市に移り住むことに。
「その前」と「その後」の暮らしが、詳しく書きこまれています。
こんな状況でも、記事連載をやめなかったツレさん。
その根性はすごいという他ない。
大人でも、自分の事だけで手一杯な時期だったのに。
3/11当日、貂々さんは銀座から浦安まで徒歩3時間半かけて帰宅したそうです。
そういえば、私もこの日は夜通し歩いてました。
「なんでこんな目に遭ってるのか」
「漫画喫茶か区の体育館で一晩休んだ方が良かったかな」
……空が白み始める頃には考える余裕もなくなり、ひたすら歩いて新小岩のマンションへ。
とどめに階段で8階まで上がって、バタンQ。
週明け、原発事故というもっともっと深刻な現実を突き付けられたのを思い出します。
感想から脱線。
ともあれ、無事な人は「その後」を生きていくわけで。
震災直後、浦安市は液状化現象でインフラが機能しなくなる。
さらに計画停電というダブルパンチ。
23区はガンガン使い放題なのに、周辺の都市が割を食う。
この時期、関東の人に申し訳ないと考えたのを思い出します
(といって、お詫びに何かしたわけでもないけど)。
また脱線。
放射性物質などの影響も考慮し、ツレさんは関西への移住を決意。
宝塚に住まいを確保します。
ちーと君はこの頃「鉄道」の道に目覚めたそうで、阪急電車に喜んでいたりしたそうです。
こんな時でも子どもはたくましい。
さて、前著でツレさんは「今の日本で子育てはやりにくい」と書いてましたが、
震災でこの傾向はますます強まった、とあります。
「子育ては自己責任でやってよ」という空気になってしまった(273p)
水や食料は危険かもしれないけど、自己判断でどうにかしてね、と。
大人はどうにかなっても、子どもはそうもいかない。
ちょっと長くなりますが、印象に残った一節を引用。
コドモを産んで育てようという希望が抱けないのも、
災害のときにガチャガチャになってしまうのも、
この国は国としての基本が歪んでしまっているんじゃないだろうか。
富めるものをさらに豊かにするだけの経済発展なんか、いまさら目指すべきものじゃないだろう。
それよりも、すべてのコドモが、ごく普通のちゃんとした大人に育っていける国を作ろうよ、と言いたい。
この国が歪んでしまったのは、僕の立場から発言すれば、
コドモを育てたことのないオジサンたちが長く政治や経済を担ってきたからだと思う。
(274p)
ボディブローのように効いてくる一節です。
みんな誰かに世話になって大きくなったのに、
男はつくるだけつくって、子育ては嫁さんやその実家におまかせ。
24時間モーレツに働き、外で稼いでくればOK。
自分の父親も無関心ではなかったが、面倒ごとは母に押し付けていた。
共働きだというのにね。
職場における育児休暇に対する認識も、「歓迎」とはいいがたい。
多少はマシになっているけれども。
「電車やバスでベビーカー」も、ちょくちょく話題になる。
ついでに言えば、「富めるものをさらに豊かにするだけの経済発展」は、
4年経った今でも現政権の目標になっている。
大企業を優遇すれば、そのオコボレで中小その他も豊かになる、
トリクルダウンという発想。
「黒田バズーカ」「量的緩和」などの政策で、
数字としていちおうの成果は出ているようだが、
それを日々の生活で実感している人がどれだけいるのやら。
とまあ、ぼやいても始まりません。
自分にできることから、コツコツ変えていきましょう。
そんなわけで、この本は単なる子育て日記に終わっていません。
震災前後のくだりは、折に触れて読み返したいところです。
◎巻末
「ツレとダーリンの子育て対談」あり。
「ダーリンは外国人」(小栗左多里著)などで有名なトニー・ラズロさんと対談しています。
◎タイトルについて
「パパ、どうしてお仕事いかないの?」というタイトル。
幻冬舎の編集担当の竹村優子さんの発案によるもので、
ちーと君が実際にそういう発言をしたわけではないそうです。
ツレさん自身は「僕こそイクメンジャー」希望だったらしいですが、
残念ながら「パパ、どうしてお仕事いかないの?」の方がずっとキャッチーで
書店で目を引く率がぐっと上がる。
実際、自分がそうだったし。
「ぼく、オタリーマン」なんかもそうだけど、
タイトルって大事だわ、と思う次第。
「ツレがうつになりまして。」の「ツレ」こと望月昭さんの子育てエッセイ。
「育児ばかりでスミマセン。」に続く、第2弾。
パパ、どうしてお仕事いかないの?
細川貂々さん・望月昭さんご夫妻の関連作品の感想は、
カテゴリからご覧ください。
◎内容
元うつ、現専業主夫の子育て日記。
「Web Magazine 幻冬舎」(Vol222~251、2010年4月~2011年8月)の連載記事
「ツレ&貂々のコドモ大人化プロジェクト」に加筆・修正したもの。
「ちーと君」こと、息子の千歳君は2歳から3歳7か月に成長。
子どもなりに主張し始める時期になり、
ツレさんもそれまでとは違った苦労を強いられることになる。
何より、2011年3月11日(金)の東日本大震災。
多くの人の日常が変わってしまいましたが、浦安市に住む一家の生活も激変。
首都圏での暮らしを避け、兵庫県宝塚市に移り住むことに。
「その前」と「その後」の暮らしが、詳しく書きこまれています。
こんな状況でも、記事連載をやめなかったツレさん。
その根性はすごいという他ない。
大人でも、自分の事だけで手一杯な時期だったのに。
3/11当日、貂々さんは銀座から浦安まで徒歩3時間半かけて帰宅したそうです。
そういえば、私もこの日は夜通し歩いてました。
「なんでこんな目に遭ってるのか」
「漫画喫茶か区の体育館で一晩休んだ方が良かったかな」
……空が白み始める頃には考える余裕もなくなり、ひたすら歩いて新小岩のマンションへ。
とどめに階段で8階まで上がって、バタンQ。
週明け、原発事故というもっともっと深刻な現実を突き付けられたのを思い出します。
感想から脱線。
ともあれ、無事な人は「その後」を生きていくわけで。
震災直後、浦安市は液状化現象でインフラが機能しなくなる。
さらに計画停電というダブルパンチ。
23区はガンガン使い放題なのに、周辺の都市が割を食う。
この時期、関東の人に申し訳ないと考えたのを思い出します
(といって、お詫びに何かしたわけでもないけど)。
また脱線。
放射性物質などの影響も考慮し、ツレさんは関西への移住を決意。
宝塚に住まいを確保します。
ちーと君はこの頃「鉄道」の道に目覚めたそうで、阪急電車に喜んでいたりしたそうです。
こんな時でも子どもはたくましい。
さて、前著でツレさんは「今の日本で子育てはやりにくい」と書いてましたが、
震災でこの傾向はますます強まった、とあります。
「子育ては自己責任でやってよ」という空気になってしまった(273p)
水や食料は危険かもしれないけど、自己判断でどうにかしてね、と。
大人はどうにかなっても、子どもはそうもいかない。
ちょっと長くなりますが、印象に残った一節を引用。
コドモを産んで育てようという希望が抱けないのも、
災害のときにガチャガチャになってしまうのも、
この国は国としての基本が歪んでしまっているんじゃないだろうか。
富めるものをさらに豊かにするだけの経済発展なんか、いまさら目指すべきものじゃないだろう。
それよりも、すべてのコドモが、ごく普通のちゃんとした大人に育っていける国を作ろうよ、と言いたい。
この国が歪んでしまったのは、僕の立場から発言すれば、
コドモを育てたことのないオジサンたちが長く政治や経済を担ってきたからだと思う。
(274p)
ボディブローのように効いてくる一節です。
みんな誰かに世話になって大きくなったのに、
男はつくるだけつくって、子育ては嫁さんやその実家におまかせ。
24時間モーレツに働き、外で稼いでくればOK。
自分の父親も無関心ではなかったが、面倒ごとは母に押し付けていた。
共働きだというのにね。
職場における育児休暇に対する認識も、「歓迎」とはいいがたい。
多少はマシになっているけれども。
「電車やバスでベビーカー」も、ちょくちょく話題になる。
ついでに言えば、「富めるものをさらに豊かにするだけの経済発展」は、
4年経った今でも現政権の目標になっている。
大企業を優遇すれば、そのオコボレで中小その他も豊かになる、
トリクルダウンという発想。
「黒田バズーカ」「量的緩和」などの政策で、
数字としていちおうの成果は出ているようだが、
それを日々の生活で実感している人がどれだけいるのやら。
とまあ、ぼやいても始まりません。
自分にできることから、コツコツ変えていきましょう。
そんなわけで、この本は単なる子育て日記に終わっていません。
震災前後のくだりは、折に触れて読み返したいところです。
◎巻末
「ツレとダーリンの子育て対談」あり。
「ダーリンは外国人」(小栗左多里著)などで有名なトニー・ラズロさんと対談しています。
◎タイトルについて
「パパ、どうしてお仕事いかないの?」というタイトル。
幻冬舎の編集担当の竹村優子さんの発案によるもので、
ちーと君が実際にそういう発言をしたわけではないそうです。
ツレさん自身は「僕こそイクメンジャー」希望だったらしいですが、
残念ながら「パパ、どうしてお仕事いかないの?」の方がずっとキャッチーで
書店で目を引く率がぐっと上がる。
実際、自分がそうだったし。
「ぼく、オタリーマン」なんかもそうだけど、
タイトルって大事だわ、と思う次第。
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