2015,06,11, Thursday
2014年11月、PHP研究所発行。
2000年に発行された「『うつ』を治す」に大幅加筆修正した最新版。
医学の本はより新しい方がいいので、現在はこちらがおすすめ。
最新版「うつ」を治す(PHP新書)
著者の大野さんは、精神科医で認知行動療法の第一人者。
DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル。5が最新)の情報を加え、薬も現在処方されているものに一新。
うつを治したい患者さん本人にも、周囲の人たちがうつを知るにも最適の一冊。
大野裕さんの著書の感想は、カテゴリからご覧ください。
漫画家の細川貂々さんと共著で「ツレと貂々、うつの先生に会いに行く」という本も出しています。
コミック形式で読みやすく、こちらもおすすめ。
◎構成
プロローグ 身近な〈うつ〉に要注意
第1章 うつ病のサイン
第2章 うつ病はどんな病気か
第3章 心理的治療
第4章 薬物療法
第5章 社会的治療
エピローグ 社会全体でのサポートを
付録 うつ病チェック
本文イラスト 藤臣柊子
(エッセイスト・漫画家。うつと長年闘病しており、うつ関連の著書多数)
◎読み方
治療について知りたい方は第3章から、
うつ病そのものについて知りたい方は最初から読んでください。
大野先生も28pで書かれていますが、
最初から最後まできっちり読む必要はないです。それをすると疲れます。
目次をざっと眺め、役立ちそうなところだけ拾い読みするだけでも良いと思います。
◎感想
自分が重要と思うセンテンスを引用しながら、感想書いてみます。
★うつ病は風邪のようなもの
前向きな気持ちで病気に向き合うという意味で、「うつ病は風邪のようなもの」という考え方は役に立ちます。
しかし、うつ病を軽くみてしまうことはとても危険です。(16p)
うつは誰でもかかる可能性がある。その点では風邪と同じ。
しかし、風邪のように短期間で治ると誤解してはいけません、という事。
★うつは気持ちの問題ではない
「精神的に弱いからうつ病になったのだ」と、つい考えてしまうのです。
しかし、抑うつ気分はその人個人の精神力ではどうすることもできないことが多いのです。(24p)
でも、うつを「なまけ病」「甘やかされて育ったから我慢を知らないだけ」と断じる人も多いのですよね。
こういう手合いと議論しても仕方ないと思う。
特に、昭和の化石じいさんは「死ぬ気でやればなんでもできる」と言いますが、無視するのが心の健康のため。
★「いつもと違う」状態に早く気づく
37pに「まわりの人からわかるチェックポイント」があります。
特にポイントになるのが「身体症状」ですね。
・睡眠障害(入眠困難、途中覚醒、早朝覚醒)
・全身倦怠感
・頭痛、眼痛
・胃痛、下痢、便秘
うつは心の異常と思われがちですが、影響は全身に及びます。
起き抜けに全身が痛む場合もあります。
★原因探しはほどほどに
うつ病でつらくなると、私たちはつい原因探しをしたくなります。
ときには子ども時代までさかのぼって原因を探し続けます。
たしかに問題を探し出して解決していくことは大切ですが、あまり遠い過去までさかのぼっても意味はありません。(39p)
子ども時代まで行きつくと、「親の育て方が悪い」という結論になりがちです。
実際、そうかもしれません。
子どもにとって親は世界の全てであり、影響は大です。
しかし、過去のことで親を責めても、互いが不幸になるだけです。
そして現状は解決しません。
子どもの頃のことをもち出しても母親に対する恨みが強くなるだけで、
問題は何も解決しません。(223p)
不満を直接ぶつけるのではなく、文章にするなり、医者や友人に話すなりすれば、
気持ちが落ち着くかもしれません。
「親も若かったんだ」と思って流す。
どうしても許せないなら、必要な時以外は交流しない。
確かマザー・テレサが、「嫌いな人を好きになるには、距離を置くこと」と言ってました。
★適応障害とうつ病の違い
この二つが違う病気であるかどうかはよくわかっていません。
それは、精神疾患の原因がまだよくわかっていないからでもあります。(81p)
これ以降は、専門的な解説が続くので割愛。
人によっては、最初の病院で「適応障害」、次の病院で「うつ病」と診断されることもあります(私がそうだった)。
それだけ、お医者さんの間でも両者の解釈に差があるのでしょう。
難しいことはともかく、大事なのは
「適応障害だからうつ病より軽い」という単純な話ではないという事です。
適応障害でもうつ病と同じように苦しみ、希死念慮にとらわれて自殺に至るケースがあります。
★認知の歪みの七つのパターン
116pに解説があります。
(1)恣意的推論……物事を少ない情報から推測し、決めつける
(2)二分割的思考……物事を白黒はっきりさせないと気が済まない
(3)選択的抽出……自分の関心のある部分にだけ注目し、結論を急ぐ
(4)拡大視・縮小視……関心のあることは大きくとらえ、ないことは小さく見る傾向
(5)極端な一般化……一度失敗しただけで「何をやってもダメだ」と結論づけたりする
(6)自己関連づけ……ささいなミスで自分を責める。グループの失敗を背負い込む
(7)情緒的な理由づけ……その時の自分の感情状態から現実を判断する
このような歪みを通して物事を認知すると、自分を追い込んでしまいます。
その歪みを修正するのが、認知療法・認知行動療法です。
療法については、本書を実際に読んでみてください。
抜粋できるものではないので。
小難しいことはできない、と思えば日記をつけるだけでもいいと思います。
最初は2,3行箇条書きするだけでもいいです。
★人づきあいが楽になるヒント
115pに10個紹介されています。
(1)自分をもっと認める
(2)他の人のことをもっと認める
(3)問題点は何かを具体的に考えてみる
(4)完璧な人間関係はない
(5)意見の食い違いを恐れ過ぎない
(6)言いづらいこともしっかりと伝える
(7)言葉に頼りすぎない
(8)思い込みから自由になる
(9)思い切って自分流を捨てる
(10)困ってもよい
まずは(1)からでしょうか……病んでる人というのは、自分を嫌いな人が多いように思います。
そして自分が嫌いですと、他人も好きになるのは難しいです。
★周囲のサポート
身近な人がうつ病にかかっていることがわかったときに、まわりの人はどのように接すればよいのでしょうか。
(中略)
一番大切なのは、患者さんの気持ちに気を配りながらよく話を聞いて、
その人のペースに合わせて次の対応を考えていくようにすることです。(219p)
うつの病状は人によって違うので、周囲の接し方も手探りになります。
1つ言えるのは、うつ病の人は面倒くさい状態です。
血のつながった家族ですらうっとうしくなります。
赤の他人が受け止めるのは難しいです。
例えば、うつの人の「自分はダメ人間だ」という愚痴に「そんなことないよ」と返すと、
考えを否定されたと思って落ち込んでしまいます。全く面倒ですね。
言葉をかけるときは気をつけた方がいいし、
何も思いつかなかったら、ただ肩を叩くとか、手を握るだけの方がいいかも。
いずれにしろ人次第です。
★新型うつ病
229~233pにわたって、非常に詳しく解説されています。
大野先生は、「ツレと貂々、うつの先生に会いに行く」という本で
「新型うつ」という病気はない、と言われています。
うつ病は厳密な診断基準(DSM)が存在しますが、新型うつには基準は存在しません。
私のかかりつけ医は、「マスコミと、不勉強な医者が広めた造語」とまで言っています。
「辛抱の足りない若い者が、なまけているだけ」と、現代の若者批判に結び付けられやすい「新型うつ」。
安易に片づけてしまって良いものでしょうか。
いつの時代でも、誰でも若いうちは未熟です。
昔は、社会に若者を受け止める余裕がありました。地域の人のつながりがありました。
今はどうでしょうか。
大企業はともかく、中小企業は育成する余裕もなく、
採った中で使えそうな者だけ残して後はポイ。
それも若者自身のせいなんでしょうか。
うかつに「新型うつ」と口にする前に、よくこの5ページを読まれた方がいいと思います。
本当に苦しんでいる人が、
「わがまま病」のように扱われることだけは避けなければならないと思います。(233p)
◎まとめ
うつ病を治したいと思っている方、理解したい方、両方におすすめできる良書です。
うつについての本は多数ありますが、まず、こちらを手に取ってみてはいかがでしょうか。
2000年に発行された「『うつ』を治す」に大幅加筆修正した最新版。
医学の本はより新しい方がいいので、現在はこちらがおすすめ。
最新版「うつ」を治す(PHP新書)
著者の大野さんは、精神科医で認知行動療法の第一人者。
DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル。5が最新)の情報を加え、薬も現在処方されているものに一新。
うつを治したい患者さん本人にも、周囲の人たちがうつを知るにも最適の一冊。
大野裕さんの著書の感想は、カテゴリからご覧ください。
漫画家の細川貂々さんと共著で「ツレと貂々、うつの先生に会いに行く」という本も出しています。
コミック形式で読みやすく、こちらもおすすめ。
◎構成
プロローグ 身近な〈うつ〉に要注意
第1章 うつ病のサイン
第2章 うつ病はどんな病気か
第3章 心理的治療
第4章 薬物療法
第5章 社会的治療
エピローグ 社会全体でのサポートを
付録 うつ病チェック
本文イラスト 藤臣柊子
(エッセイスト・漫画家。うつと長年闘病しており、うつ関連の著書多数)
◎読み方
治療について知りたい方は第3章から、
うつ病そのものについて知りたい方は最初から読んでください。
大野先生も28pで書かれていますが、
最初から最後まできっちり読む必要はないです。それをすると疲れます。
目次をざっと眺め、役立ちそうなところだけ拾い読みするだけでも良いと思います。
◎感想
自分が重要と思うセンテンスを引用しながら、感想書いてみます。
★うつ病は風邪のようなもの
前向きな気持ちで病気に向き合うという意味で、「うつ病は風邪のようなもの」という考え方は役に立ちます。
しかし、うつ病を軽くみてしまうことはとても危険です。(16p)
うつは誰でもかかる可能性がある。その点では風邪と同じ。
しかし、風邪のように短期間で治ると誤解してはいけません、という事。
★うつは気持ちの問題ではない
「精神的に弱いからうつ病になったのだ」と、つい考えてしまうのです。
しかし、抑うつ気分はその人個人の精神力ではどうすることもできないことが多いのです。(24p)
でも、うつを「なまけ病」「甘やかされて育ったから我慢を知らないだけ」と断じる人も多いのですよね。
こういう手合いと議論しても仕方ないと思う。
特に、昭和の化石じいさんは「死ぬ気でやればなんでもできる」と言いますが、無視するのが心の健康のため。
★「いつもと違う」状態に早く気づく
37pに「まわりの人からわかるチェックポイント」があります。
特にポイントになるのが「身体症状」ですね。
・睡眠障害(入眠困難、途中覚醒、早朝覚醒)
・全身倦怠感
・頭痛、眼痛
・胃痛、下痢、便秘
うつは心の異常と思われがちですが、影響は全身に及びます。
起き抜けに全身が痛む場合もあります。
★原因探しはほどほどに
うつ病でつらくなると、私たちはつい原因探しをしたくなります。
ときには子ども時代までさかのぼって原因を探し続けます。
たしかに問題を探し出して解決していくことは大切ですが、あまり遠い過去までさかのぼっても意味はありません。(39p)
子ども時代まで行きつくと、「親の育て方が悪い」という結論になりがちです。
実際、そうかもしれません。
子どもにとって親は世界の全てであり、影響は大です。
しかし、過去のことで親を責めても、互いが不幸になるだけです。
そして現状は解決しません。
子どもの頃のことをもち出しても母親に対する恨みが強くなるだけで、
問題は何も解決しません。(223p)
不満を直接ぶつけるのではなく、文章にするなり、医者や友人に話すなりすれば、
気持ちが落ち着くかもしれません。
「親も若かったんだ」と思って流す。
どうしても許せないなら、必要な時以外は交流しない。
確かマザー・テレサが、「嫌いな人を好きになるには、距離を置くこと」と言ってました。
★適応障害とうつ病の違い
この二つが違う病気であるかどうかはよくわかっていません。
それは、精神疾患の原因がまだよくわかっていないからでもあります。(81p)
これ以降は、専門的な解説が続くので割愛。
人によっては、最初の病院で「適応障害」、次の病院で「うつ病」と診断されることもあります(私がそうだった)。
それだけ、お医者さんの間でも両者の解釈に差があるのでしょう。
難しいことはともかく、大事なのは
「適応障害だからうつ病より軽い」という単純な話ではないという事です。
適応障害でもうつ病と同じように苦しみ、希死念慮にとらわれて自殺に至るケースがあります。
★認知の歪みの七つのパターン
116pに解説があります。
(1)恣意的推論……物事を少ない情報から推測し、決めつける
(2)二分割的思考……物事を白黒はっきりさせないと気が済まない
(3)選択的抽出……自分の関心のある部分にだけ注目し、結論を急ぐ
(4)拡大視・縮小視……関心のあることは大きくとらえ、ないことは小さく見る傾向
(5)極端な一般化……一度失敗しただけで「何をやってもダメだ」と結論づけたりする
(6)自己関連づけ……ささいなミスで自分を責める。グループの失敗を背負い込む
(7)情緒的な理由づけ……その時の自分の感情状態から現実を判断する
このような歪みを通して物事を認知すると、自分を追い込んでしまいます。
その歪みを修正するのが、認知療法・認知行動療法です。
療法については、本書を実際に読んでみてください。
抜粋できるものではないので。
小難しいことはできない、と思えば日記をつけるだけでもいいと思います。
最初は2,3行箇条書きするだけでもいいです。
★人づきあいが楽になるヒント
115pに10個紹介されています。
(1)自分をもっと認める
(2)他の人のことをもっと認める
(3)問題点は何かを具体的に考えてみる
(4)完璧な人間関係はない
(5)意見の食い違いを恐れ過ぎない
(6)言いづらいこともしっかりと伝える
(7)言葉に頼りすぎない
(8)思い込みから自由になる
(9)思い切って自分流を捨てる
(10)困ってもよい
まずは(1)からでしょうか……病んでる人というのは、自分を嫌いな人が多いように思います。
そして自分が嫌いですと、他人も好きになるのは難しいです。
★周囲のサポート
身近な人がうつ病にかかっていることがわかったときに、まわりの人はどのように接すればよいのでしょうか。
(中略)
一番大切なのは、患者さんの気持ちに気を配りながらよく話を聞いて、
その人のペースに合わせて次の対応を考えていくようにすることです。(219p)
うつの病状は人によって違うので、周囲の接し方も手探りになります。
1つ言えるのは、うつ病の人は面倒くさい状態です。
血のつながった家族ですらうっとうしくなります。
赤の他人が受け止めるのは難しいです。
例えば、うつの人の「自分はダメ人間だ」という愚痴に「そんなことないよ」と返すと、
考えを否定されたと思って落ち込んでしまいます。全く面倒ですね。
言葉をかけるときは気をつけた方がいいし、
何も思いつかなかったら、ただ肩を叩くとか、手を握るだけの方がいいかも。
いずれにしろ人次第です。
★新型うつ病
229~233pにわたって、非常に詳しく解説されています。
大野先生は、「ツレと貂々、うつの先生に会いに行く」という本で
「新型うつ」という病気はない、と言われています。
うつ病は厳密な診断基準(DSM)が存在しますが、新型うつには基準は存在しません。
私のかかりつけ医は、「マスコミと、不勉強な医者が広めた造語」とまで言っています。
「辛抱の足りない若い者が、なまけているだけ」と、現代の若者批判に結び付けられやすい「新型うつ」。
安易に片づけてしまって良いものでしょうか。
いつの時代でも、誰でも若いうちは未熟です。
昔は、社会に若者を受け止める余裕がありました。地域の人のつながりがありました。
今はどうでしょうか。
大企業はともかく、中小企業は育成する余裕もなく、
採った中で使えそうな者だけ残して後はポイ。
それも若者自身のせいなんでしょうか。
うかつに「新型うつ」と口にする前に、よくこの5ページを読まれた方がいいと思います。
本当に苦しんでいる人が、
「わがまま病」のように扱われることだけは避けなければならないと思います。(233p)
◎まとめ
うつ病を治したいと思っている方、理解したい方、両方におすすめできる良書です。
うつについての本は多数ありますが、まず、こちらを手に取ってみてはいかがでしょうか。
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