工藤美代子「うつ病放浪記 絶望をこえて生きる」
2013年7月、講談社発行。
著者は1950年生まれのノンフィクション作家。昭和史や評伝、エッセイなど著書多数。
2011年12月に「うつ病」と診断され、出版時点も治療中。

うつ病放浪記 絶望をこえて生きる

結論から言うと、自分の参考にはなりませんでした。
中高年の「うつ病」が知りたい方には、得るものがあるかもしれません。

ただ、「絶望をこえて生きる」というサブタイトルは大げさすぎる気がします。
作家として地位と名誉があり、穏やかな余生を過ごすだけの人に「絶望」と言われてもね。
「何を大げさな」と思います。
年金のとりっぱぐれもないでしょうしね。

決めつけかもしれませんが、「うつ病と健気に闘うアタクシ」という感じで、
自分に酔って大げさに書いてるような印象あり。

◎初出
講談社MOOK「G2」Vol.11~Vol.13
(2012年9月、2013年1月、5月)に加筆・訂正


◎構成
第一章 死に至る病
第二章 医師にすがるか神にすがるか
第三章 かかりつけ医をさがして
第四章 放浪の果てに
第五章 ローンが組めない
第六章 それぞれの「うつ病放浪記」
第七章 命を諦め始める季節
第八章 本当に大切なもの


◎内容
大きく4パートの構成に分かれます。

(1)著者自身のうつ病体験/第一章~第五章
(2)うつ患者へのインタビュー/第六章
(3)かかりつけ医(神田医院・伊藤美紀氏)との対話/第七章
(4)まとめ/第八章

うつ闘病記の本も、うつ患者へインタビューしている本も沢山あるが、
うつ患者が、他のうつ患者にインタビューしている本、というのは中々珍しい。
他には東藤泰宏「ゆううつ部!」くらいしか知りません。
さらに、かかりつけ医に質問をぶつける章もある。

よく言えば多岐にわたる内容であるし、悪く言えばまとまりがないです。
自分の事を書いたり、他人の事を書いたり。

「転んでもただでは起きない」といいますが、
うつになってもそれをネタにして一冊仕上げてみせるのは、さすがノンフィクション作家。
自分の名前で食ってる人は、バイタリティが違うな、と思う。

ただ、上記のように詰め込み気味なので、
全体がボンヤリしているような気もいたします。

ちなみに、タイトルに「放浪記」とあるのは、
自分に合う医者を探して何件もクリニックをハシゴした事から来ています。
東京はクリニックが多いですが、それだけに玉石混交ということかもしれません。

以下、印象的なくだりをピックアップしてみます。


◎うつ病って謎
うつ病って謎です。
こういうことをしたらなるというものでもなければ、こうすれば治るというものでもない。
症状は様々だし、薬の効き目も人によってものすごく違う。
あいまいでつかみがたい謎の病気という感じがします。
(132p)

本人もどう対処したらいいかわからない。
周囲の人間はなおさら。
そこが難しいところです。


◎認知行動療法
工藤 どういう方が認知行動療法の対象になるんですか?
伊藤 基本的に、うつ病の患者さんはしない方がいいです。
その人をある意味、否定する部分もありますから。
強迫神経症やパニック障害など、神経症系の方は比較的効果が出る方もいらっしゃいます。
(168-169p)

認知行動療法。
これも言葉が一人歩きしている感があります。
「抗うつ薬と同じかそれ以上に効果がある」という人もいれば、
「面倒くさいでしょう」という医者もいる。

ちなみに、前者の意見は東藤泰宏「ゆううつ部!」で、
後者のくだりは早川いくを「ウツ妻さん」で読めます。

かかりつけ医次第かもしれません。

本書の中で、神田医院の伊藤美紀先生は

「認知行動療法をすると、変われるのかな」と思ってしまうようですけど、
意外と適用範囲は狭いです。
それよりも、「あれこれ余計なことを考えないで、薬を飲んで寝る」という、
そこが大事ですね。
(170p)

と結んでいます。
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