河原和音「恋愛女子短編集 500マイル」感想
3/18に河原和音先生の初期読みきり集「恋愛女子短編集 500マイル」発売されました。


500マイル(集英社文庫)/Amazon


1995年から2002年まで、「別冊マーガレット」「デラックスマーガレット」に掲載された読み切り6編を収録。
どれも今から十年以上前の作品ということに驚き。
息の長い作家さんですね。

以下、感想です。

◎作品初出
500マイル~おひさま線~
*別冊マーガレット1996年4月号
500マイル~さよなら線~
*別冊マーガレット1996年5月号
500マイル~しあわせ線~
*別冊マーガレット1996年6月号
せっかく夏だし
*別冊マーガレット1995年8月号
友達なんていわないで
*デラックスマーガレット1996年9月号
チョコレート・ステークス
*別冊マーガレット2002年2月号
あとがき
*描きおろし


◎500マイル~おひさま線~
「さよなら線」「しあわせ線」とあわせて、電車を舞台にしたオムニバス作品のひとつ。
電車は京王井の頭線がモデルらしい。

3編とも「500マイル」という単行本にまとめられてますが、今では入手が難しい(1996年9月発行)。

500マイル/Amazon

電車通学することになった女子高生・新田が、同じ電車使ってる工業高校の男子・浅野に恋する話。
話の筋は置いといて、セーラー服はやはりかわいい(力説)
こじゃれたブレザーもいいが、セーラーの初々しさには勝てません!
ま、おじさんになりかけの男の妄言です。

一つ欠点があるとすれば、浅野が野球部なんだけど野球部っぽくないこと。
坊主じゃねえし。
工業の男くささもあんまりない……いや少女漫画に求めるもんじゃないけど。
この反省が活かされたのが「青空エール」の山田大介、かどうかは知らん。

☆時代が分かる描写
主人公の友達が、浅野の隠し撮り写真を新田に渡す場面。
たぶん使い捨てカメラを使ったんでしょうが、今なら当然携帯で写メって送信、終わり! になるでしょう。


◎500マイル~さよなら線~
河原作品ではきわめて珍しい、女子大生が主人公の話
「さよなら線」というのは、主人公が恋人に別れを告げるために電車に乗ったところから。

大学生ということもあり、ごく普通にキスやお互いの部屋で食事したり、と
ちょっと大人風味のシーンが出てくる。
この辺は、約二十年経った今もあまり変わらないんだな……。

☆時代が分かる描写
固定電話に留守電入れてるシーン。
そう、当時は一人暮らしの学生の部屋に固定電話があったのです。
他に、友人や実家とすぐ連絡を取る手段がないから。
今ならこれも携帯になる。


◎500マイル~しあわせ線~
駅員さんに恋した卒業間際の女子高生。
「卒業までにゲットする」と押して押して押しまくる話。

主人公が異様にポジティブかつアクティブ。
「さよなら線」がしっとりした話なので、余計に明るい話に思える。

☆時代が分かる描写
主人公が駅員さんにポケベル番号を渡すところ。
ポケットベル!
俺は田舎っぺだから持ったことないけど、0~9の数字だけでやりとりする
超簡素な携帯みたいなものだったそうです。
今だったらケー番かメルアドになる、って携帯のことばっかりじゃねえか

数字しか使えないから、0=「お」、1=「い」とか読み替えてメッセージを送ったりしたらしい。
「ポケベルが鳴らなくて」って名前のドラマがあるくらい、当時はありふれたツール。
そういや「金田一少年の事件簿」でも使ってた(金田一といえば、自分の中では堂本剛とともさかりえ)。

好きなアーティストのくだりでtrf、スピッツ、シャ乱Q、安室奈美恵……懐かしすぎてお兄さん涙出てくるわ(ノД`)・゜・。
今でも現役の安室さん。
「アムラー」って社会現象になった頃ほど存在感ないけど、現役であることがすごいと思う。

あと「オリックスのイチロー」。
当時のオリックスは強かったらしい。
「がんばろう神戸」なんてフレーズもあった(元ロッテの神戸[かんべ]じゃないよ)。
引退も現実味を帯びてきたけど、イチローは今でも現役メジャーリーガー。これまたすごいの一言。

脱線の方が長い。これを果たして感想と呼んでいいのか。


◎せっかく夏だし
好きな男子に近づくために、必要のない夏期講習に出る女子の話。
この短編集の中で一番古い。
単行本「修学旅行」にも収録(1996年6月発行)。

修学旅行/Amazon

その割に古臭くないのは、「受験」「恋」って普遍的なものがテーマだからか。


◎友達なんていわないで
「友達」から「恋愛」に踏み出せないもどかしさを書いた話。
単行本「先生!」1巻に収録(1997年3月発行)。文庫じゃなくて単行本の方です。

先生!(1)/楽天ブックス

男女間の友情ってあるかな……少なくとも、男同士の友情とは違うかな。

☆時代が分かる描写
主人公の女子の髪型は、安室さんを意識したものだそうです(あとがきより)。
カラーじゃないから推測だが、茶髪にしている。
茶髪もこの頃からだったかな……。


◎チョコレート・ステークス
バレンタインに、意中の女子からのチョコレートを期待する男子の話。
男視点というのが珍しい。
この短編集では最も新しい作品。
時期的には「先生!」連載終盤の頃の読み切り。

単行本「愛のために」に収録(2002年12月発行)。

愛のために/Amazon

やきもきした感じが良く出ており、男の心理描写にいちいちうなずく。
変に格好つけたり、男同士で牽制するとか。
異性視点も違和感ないのは、さすがベテラン作家さん。

一番の萌えポイントは八重歯、八重歯!!( ゚∀゚)o彡゜
……これも書いたな。

☆時代が分かる描写
カッターシャツの上にベスト。
そして登下校時はブレザー。


◎あとがき
描きおろし。
「500マイル」執筆当時は締切の緊張感と作業の遅れで眠れなかったらしい。
何かを作るっていうのは、身を削るんですね。

欄外の書き込みによると、「500マイル」の元ネタは「妹の恋人」という映画の主題歌からだそうです。
1993年の洋画みたいですね。ジョニー・デップ主演。
主題歌は、正確には「I'm Gonna Walk (500Miles)」。
参考:妹の恋人@映画の森てんこ森


◎まとめ
どの作品も古いといえば古いですが、
恋につきものの「切なさ」「もどかしさ」「一途さ」という、いつの時代も変わらないものを描いています。
出てくるツールが古かろうが、そんなことは問題なく面白いと思う。

あとは一歩踏み出す度胸ですよ。これ重要。
後悔してる人間が言うんだから間違いない(書いてて悲しくなる……)。

絵柄は、どちらかというと昔の方が好きですね。
「先生!」連載初期、この短編集だと95,6年ごろの、水彩画みたいな淡い感じが。
ストーリーが面白いから読んでるんで、絵柄で読んでるわけじゃないけど。

あと、なんでこの時期に短編集発売かというと、
河原先生が原作担当されてる「俺物語」のアニメ化に合わせたようですね。
作画担当のアルコ先生の短編集も同時発売ですから。


◎余談
河原先生のデビュー作は「彼の一番好きなひと。」という作品だそうですが(1991年4月の別マ掲載)、
どの単行本にも収録されてません。

出来に納得できないから収録されないのかもしれませんが、
ファンとしては是非読んでみたいものです。

いよいよとなれば、国会図書館行くしかないか?

2015.3.21追記
運よく別マ本誌が手に入ったので、読んでみました。
感想は⇒こちら
| 漫画・本::その他の河原和音作品 | 18:15 | comments (0) | trackback (0) |
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