河原和音「青空エール」52話感想(別冊マーガレット2013年8月号)
毎月13日の恒例、青空エールの感想です。
別冊マーガレット2013年8月号掲載。


<前号までのあらすじ>
マルコが「私、一金とったら水島に告白するんだ」というフラグを立てました。
詳しいストーリーはカテゴリからどうぞ。

季節は秋。

白翔高校野球部は、秋の大会札幌支部予選4回戦で札幌川北に敗退。
スコアは2対3。
試合は丸々カットなので詳細不明。

あっさりセンバツのチャンスもなくなりました。
山田に残されたチャンスは、3年夏のみ。

北海道は、夏も秋も支部予選→北海道大会、というステップで予選を行います。
地域が広く移動が大変なためです。

夏は県内の全校が1つのトーナメントで戦う、という形式が多いのですが、
面積の広い北海道ではそうもいきません。

しかし、支部予選すら突破できないということは、
白翔の甲子園は限りなく厳しい。
道内のベスト16にすら残れないってことだし。
川北がめちゃ強豪って可能性もありますが……

白翔は公立校。
どこもそうだが、公立が私立を破るのは難しいのです。

少女漫画の割りに(失礼)、そのへんの描写がやけにリアルだ。
甲子園に行けないまま終わるってのも現実味を帯びてきたような。

近年は21世紀枠という、秋に上位に入れなかった学校を選出するシステムもありますが、
支部予選敗退では見込みなさそう。
何より、そんな野球のマニアックなシステムを描く漫画じゃないし。
閑話休題。

吹奏楽部は全国大会に向けて追い込みの真っ最中。
つばさら控えメンバーは、搬入搬出の段取りや、
不測のメンバー交代に備えてホール外で練習。

屋上? にて練習中のつばさのところへ山田がやってくる。
「本番は夏だ だけど勝ちたかった」と戦う男の顔をする山田。

笑ってる大介くんはほっとしていて好きだけど
真剣な顔の大介くんは なんか男子だなって思う


そんなモノローグのつばさも、なんか女子な顔です。

屋上から戻ると、瀬名が練習用教室で体育すわりしている。
負のオーラが見えてます。

「ムリです 吹けません」とホラー漫画のフォントでしゃべる瀬名。
合奏練習で先生にも先輩にもボロカスに言われて自信がなくなったらしい。
まあ、誰もが通る道ですな。
元々この人、打たれ弱そうだし。

当然つばさは励ます。
「すぐ唇もバテなくなるよ 私でよかったらいつでも合わせるし」
いつの間にか頼れるお姉さんになっている。

「オレ… 本番あてれますかね」
(あてれる=音を正確に出す、の意。トランペットはあてるのが難しい部類の楽器)
「あてれるって」

一瞬元気になりかける瀬名だが、「そんなの何の根拠もないじゃないですか」とまたブルーに。

根拠と言われ、つばさは山田に何度となく励まされてきたことを思い出すのだった。

理由がなくても根拠がなくても 誰かが本気で信じてくれる
それが力になること 私は知ってる


「できるよ 絶対あてれる大丈夫」
つばさの はげまし!
ピグマリオンこうかはばつぐんだ!

瀬名が急激に回復し、「そうスよね 俺しかあてれないスよね!」と立ち上がる。
単純なやつ……。

この日は地元でホール練習できる最後の日。
OBが何名か訪問しているらしく、森先輩と目の細い先輩(山根?)がやってきました。
森先輩、つばさに「来年があるよ」と頭に手をやる。

先代のイケメン部長は、部員の前で一言。
「自分たちは全国にすら出られないという歴史を残してしまいました
でも今年出てくれて安心しました」
部長および3年のプレッシャーが想像できるセリフである。

最後に、「全国でも白翔サウンドを響かせてください」
この○○サウンドってフレーズ、よく使うんだけど具体的な意味はわからんよね。
まあ、そんな茶々を入れる場面じゃないけど。

次の日。
瀬名がまたまたダウンしている。
そんな律儀に体育すわりせんでも……。

つばさも内心「メンタル弱いなー」と思うのだが、懲りずに励ますのだった。

「私もくだらないことでいちいち悩んで 大介くんに励ましてもらって続けてこれたんだ」
思えば、序盤の展開はそんなのの繰り返しでしたね。
つばさが常時顔の濡れたアンパンマンで、山田がバタコさんみたいな。
ダメじゃんそれ。

瀬名、「先輩はどうしてそんなに強いんですか? 俺のせいでメンバー落ちたじゃないですか
俺だったら先輩みたいにはできないっす」

そして次のページ、いきなり
「先輩ぎゅってさせてもらっていいですか? 抱きしめさせて欲しいんス」



……え、なに、乱丁?

おかしい……俺は部活漫画を読んでいたはずだが……
いつのまにかイケメンに言い寄られる少女漫画にすりかわってる。

瀬名、プロセス飛ばしすぎだろ……高校1年生らしいといえば、らしいけど。


「そしたら本番落ち着ける気がするんですよ
力を出し切っていい演奏できるんじゃないかと思うんです」

なにその理屈。
そんなら俺も、今度商談行くとき事務の女の子にぎゅっとさせてもらうわ!
そんで泣かれるわ!
セクハラで始末書かかされるわ!
営業じゃないけど。

普通ならすぐさまはねつけるのだが、
つばさは「全国金賞のためなら、一金のためなら何でもするモード」になっている。

考えあぐねた結果、「わかった」と実に男らしい顔でOKする。

そして……コメディのように山田が登場するわけもなく……
瀬名はふつーに抱きしめて満足そうに帰るのでした。

一人残ったつばさ、「やっぱりだめだった」と脱力。

相談を受けたまるちゃんは、一瞬ギャグ顔。
( ゜Д゜)
そら、こんな話リアクションに困りますわ。

「つばさの気持ちもわかるよ 断って瀬名が吹けなくなってもやばいもんね」
「なんかもう やってからすごく後悔して……」

そこへ瀬名がやってきて、
「今日は合奏で一回も注意されなかったっすよ! すごくないすか?」
と言いたい事だけ言って去るのだった。

「確かに今日の瀬名の音はのびてたわ」とまるちゃん。
他パートですらわかるんだから、相当違ったのでしょう。

まあ、男なんざみんな単純なもんなんですよ。
これが年を食うと、胸もむとか××とか○○になる。
俺は瀬名を笑えない。

まるちゃん、「一金はとりたいけど、つばさを犠牲にしてまでとろうとは思わないよ」
そりゃそうだ。

そこへ山田からメールが。
「おみやげとかマジでいーから ベンチじゃなくても部の一員だからな!」
メンバー外だからって観光気分になるなってことですね。いいこと言う。

部活の帰り道、つばさは山田に今日の出来事を話すのだった。

山田、角中ばりの迫真顔で「それはだめだろ」
「でも、小野の気持ちもすげえわかる そこまでして 金……って言い切れねえよな」
山田も甲子園に重きを置いているだけに、簡単に否定できないようです。

「キライになった?」
「なんねーから! 次からは断って」

「まるちゃんとかだったら俺も気にしねーから 男子はやめて」
『まるちゃん』ってなんであだ名? 今まで接点あったっけ……まあいいや。

「そいつ 小野を好きなんじゃね」
山田は当然の疑問を口にするが、つばさは「絶対違うと思うけど」と否定。

読者目線だと惚れてると思うが、ちょっと違うかもしれない。
部に頼る人間がいなくて、甘えてるように見えなくもない。
なにせペットの男子は水島と瀬名だけで、水島は気軽に話せる間柄じゃない。
そして、あんなプライドが高いと友達もあんまりいなさそうだ。

なんにしてもぎゅっとするのはダメです。

「そうだったとしても 私 ことわるよ」
山田は「ん」とだけ言って、つばさの肩に手を回すのでした。

また違う漫画かよ……今月の集英社は何をやってるんだ……(現実、いや漫画逃避)。

「マジで違うやつにはさせないで」
と念押しし、山田は家へ帰るのでした。

つばさも「もうあんなこと絶対しない」と誓う。
翌日、挨拶する瀬名に「昨日のはもうしないよ! 自分で強くなって!」ときっぱり断ります。
いつもながらテンポがいい。
普通のコメディならこれで2,3話ひっぱるところだ。

その日は東京へ向けての移動日。
楽器をトラックに積み込んだ吹奏楽部員は、空港へと向かうのでした。

部活って 答えがわからなくていちいち悩むけれど
何がいちばん大事なのかは間違えないでいたい


「がんばってくるよ 大介くん」とつばさのモノローグで終了。以下次号。

<感想>
なんか「ぎゅっとさせて」で全てを持っていかれた気がする。
瀬名は恋愛要員にするとは予想していたけど、
今月号を読むとちょっと違うかもしれない、という気がしてきました。
好きな女性に対し、あんなぶっ飛んだ頼みはしないのでは、とも思う。
そもそも触れることすら緊張するはず。
しかし、高1の男なら言うかもしれない、という気もする(まだまだ子どもだし……逆に山田は大人すぎる)。
いやー、わかんねえっす。

来月は全国吹奏楽コンクール。
3年にとっては最後の舞台。となると、香織先輩との絡みがあるかな。

<移動についての余談>
あくまで想像ですが、楽器は陸路、部員は空路、ではないかと思います。
楽器を飛行機で運ばないのは、空きスペース的な問題と、楽器へのダメージの問題があるからです。

まず、山田が本編で言ってるように飛行機には楽器を積む容量はなさそう。
トランペットくらいならいけるが、チューバや打楽器のティンパニは難しいでしょう。

そして移動中のダメージ。
アップダウンが激しいと、衝撃がひどいし最悪部品が外れるかもしれない。
自分が抱えるのも許可してくれませんしね。

つばさが毛布を運んでるのは、楽器と楽器の間の緩衝材にするためです。
それだけ衝撃には気を使います。
トラックの荷台には、2,3人部員に入ってもらうこともあります。
空きを埋めるのと、急カーブなどで積み荷が崩れないようにするためですね。
当然明かりはないわけで……、なかなか面白い体験でした。

<今月の河原先生>
今年は甲子園の取材に行きます! 楽しみです!
せっかくなのでキッザニアとUSJにも行きます。
→ということは、やっぱり山田は甲子園出るんだろうか。読めない。

<俺物語12話1行感想>
「好きなんだっ 人間としてっ……」の間に「ゴリラじゃなく」を勝手につけてしまい、笑いが抑えきれなくなった。
今回のエピソードはこれで終了なのか、そうでないのかよくわからない。
あ、2行になった。

<単行本情報>
7月末に「高校デビュー15 遠恋編」、8月末に「青空エール13」が出ます。
高デは13年6月号など読みきりの収録。


青空エールは、今まで通り4話収録なら13年4月号13年5月号13年7月号、そして今月号の話が読めます。
13年6月号の「君に届け」とのコラボ漫画は載せるだろうか。

| 漫画・本::河原和音「青空エール」 | 21:59 | comments (2) | trackback (0) |
コメント
ときぞうさん、こんばんは。
今月もコメントありがとうございます。

今回は珍しく山田が「男」を見せた回でしたね。
しかしこんな状態を3年夏まで続けるつもりなのか。
読者はあと何年じれればいいんでしょう。
そして私はあと何回クサイ場面に悶絶することになるのか(知らんがな)。

瀬名、私もお子ちゃま説に一票入れます。
こんなでも、来年1年を指導するようになれば変わるかもしれませんね。
そんで、結局後輩とくっついたりして。

ではまた。
| 惣一郎 | EMAIL | URL | 13/07/25 01:18 | uuWqq/ZQ |
惣一郎さんこんばんは。ときぞうです。

今月号は、惣一郎さんのレビューを読んでから、立ち読みしに行ったんですが(買う気ゼロ)・・・

甘い・・ジョージアオリジナル並みに甘い(笑)。これで付き合ってないってまだ言い張るか、この二人。

私「かっ・・肩まで抱いておいて、付き合ってないって・・っ。おばちゃんをジレ死させるのかいっ?」
山田「え?や、だから甲子園に行けたら付き合・・」
私「そういうことじゃなくてっ!(号泣)」

妄想劇場 終

大介もやっぱり、それなりに独占欲っぽい気持ちがあるんだなー。ちょっと安心。もうこんなにいっつも一緒に帰ったりしてるんだから、多能さんは早く諦めるように(指導)。

瀬名はメンタル弱いっすねー。中学まではきっとぶっちぎりで上手っていうか「高校級」と言われていたんでしょう。名門校に入学ってか入部して、初めて挫折を味わう典型的なパターンですね。先月までは恋愛要員だと思っていたんですが、なんか今月号を読む限り、・・ただのあまえんぼさん(笑)にも見えてきた。瀬名の明日はどっちだ?

来月号は全国大会パートですね。水島に告白できるように頑張れまるちゃん!

ではまた来月やってきます。

追伸 河原先生、甲子園取材ですか。うーむ期待してしまうなー。まさか「君届」の龍の為の取材でもないだろうし(笑)。
| ときぞう@道央 | EMAIL | URL | 13/07/24 21:06 | YIn/7OHA |
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