2015,05,27, Wednesday
「ツレがうつになりまして。」で有名な漫画家・細川貂々さんと、
精神科医・慶応義塾大教授の大野裕さんの共著。
2011年3月、朝日新聞出版発行。現在は文庫版あり。
ツレと貂々、うつの先生に会いに行く ツレと貂々、うつの先生に会いに行く (文庫)
細川貂々さん・「ツレ」こと望月昭さんご夫妻の質問に、
大野先生が答える、という形式で描かれています。
コミック形式で読みやすい、「うつ」の入門書。
細川貂々さん・望月昭さんご夫妻の関連作品の感想はこちら、
大野裕さんの著書の感想は、こちらからご覧ください。
◎おすすめ!
まず、この本はおすすめです。
理由その1。実際のうつ病経験者とその奥さんがインタビュアーだから。
理由その2。大野裕さんが良い先生だから。
なんでそう判断できるか? 肩書きが色々あるからではないです。
18ページでこんなやりとりがあります。
Q「うつ病って、結局何なの?」
大野先生「実はぼくにもはっきりわからないんですよ」
大学教授であり、日本における認知療法の第一人者であり、
様々な学会の要職についてるほどの先生が「わからない」と素直におっしゃる。
小難しい言葉をならべ、中身のない説明をする「先生」もいる中、
「わからない」といえる。
そういう方が手がけられてるので、一読する価値はあります。
◎内容
いくつか、印象に残ったくだりをピックアップします。
大野先生「自分は関係ないと思ってる人がいることです
誰でもなる病気なんですよねー」(20p)
⇒交通事故や風邪は、誰でもならないよう気を付けます。
それと同じように、家族や自分にアンテナをはる事です。
Q「うつ病って体のどこの病気なの?」
大野先生「体のどこが悪いというわけではなく 全体のバランスが崩れている状態なのです」(23-25p)
⇒脳がきちんと働かなくなると、だるさや痛みになって現れます。
自分の場合は、全身が押さえつけられるような痛みで早朝目が覚めることがよくあります。
Q「病気と単なる落ち込みはどう区別するの?」
大野先生「なかなか区別できないんです いつのまに? って感じです
心は他者に見えない 目に見えない物を判断するのは難しいんです」(34-35p)
⇒うつが難しいと言われる理由がここにある。
ついでに、「なまけ」と判断されるのも、骨折や出血のようにはっきり目に見えないから。
Q「うつになりやすい性格ってあるの?」
大野先生「性格よりうつにつながるのは その人の持ってる『極端な考え方のクセ』の方が大きいです」(37-38p)
⇒『極端な考え方のクセ』を矯正するのが、認知療法・認知行動療法。
大野先生「『どうしてなったのか?』と本人も周りもクヨクヨしないことです
『今、何ができるか?』を一番に考えましょう」(44p)
⇒会社のせい、人間関係のせい、両親のせい、などと原因を追究するより、心を休めた方が良いです。
Q「家族はどう接すればいいの?」
大野先生「適切な距離を保ちつつ、過干渉にならないように接しましょう
客観的に人を見られるかどうかが大事なのです
客観的になるのが一番難しいのは 親子という関係です」(52-53p)
⇒実際、親は子どものことになると冷静な判断ができません。
私は実家を離れて療養することを勧められました。
Q「周りにはどう説明すればいいの? 精神論を振りかざす世代には?」
大野先生「わかってもらおうと期待しないことです」(57p)
⇒「うつは気持ちが弱いからだ」などという、昭和の化石は無視した方がいいです。
タチの悪いことに、「薬は毒だ。副作用が危ない」とにわか仕込みの知識でアドバイスする有害な化石もいます。
身の安全のためにも、遠ざかった方がいいです。
「誰だって辛い時がある。私は1人で乗り切った」と偉そうに主張する人も、相手にしない!
たまたま運が良かったか、
助けてもらっていたくせに、自分1人の手柄だと記憶をすりかえているだけです。
大野先生「『どこかで防げなかったのか』と考えだすとつらいだけなので
『今、どうすればいいのか』を考えましょう」(61p)
⇒とはいえ、どうしても考えたいなら、文章にでもまとめてみると良いと思う。
原因の対象、例えば母親を直接責めてもお互い悲しくなるだけなので。
Q「近所の目が気になるという話をよく聞きます」
大野先生「それは本人が『こうあるべき』という考えにしばられているということ
しばられて自分を追い詰めている 『今は自宅療養してるんだ』と思うことです」(68-69p)
⇒骨折などのケガをしている、と考えることです。
Q「『新型うつ』は レッテルを貼っただけで実際には『ない』と思われてますか?」
大野先生「私は『ない』と思ってます 嫌いなんです わがままな人と言ってるみたいで」(70-71p)
⇒主に仕事を休む若者に大して使われる「新型うつ」。
きちんとした医学用語ではなく、マスコミと不勉強な医者が作った言葉です。
そのような病気はありません。
うつや非定型うつには明確な判断基準(DSM-5)がありますが、新型うつにはありません。
新型うつについて書いた本も、おすすめできない……と、私のかかりつけの先生は言ってました。
Q「家族はどうすればいいの?」
大野先生「大事なことは「ちゃんと気持ちをコトバにして言う』ということ」(72p)
⇒「言わずに察する」ことを美徳とする日本人が不得意なところ。
でも、嫌なことは嫌と言った方がいいです。
特に、うつ本人は気持ちを外に出した方がいい。
Q「日記をつけることはどのような役に立ちますか?」
大野先生「考え方に『悪いクセ』がついてる時 それを自覚して良い方に向けることができる」(80-81p)
⇒認知療法、認知行動療法と呼ばれるものです。
うつになると何事もオーバーに、悲観的に考えがちですが、
それを文章化すると矯正できます。
Q「受け入れることもひとつの解決方法ですか?」
大野先生「すごく大事です」(88-89p)
⇒うつ本人は過去に悪いイメージをもっている。
それを聞いて「そんなことないよ」と励まされると、自分の考えが否定され、かえってショックを受ける。
面倒くさいですね。でも、病気がそうさせているのです。
ただ「そうだったんだ」と言うだけで、うつの人は落ち着きます。
Q「病気が良くなった時『寛解』という難しいコトバを使うのはなぜですか?
完治というコトバを使えないのはなぜですか?」
大野先生「私にもよくわからないのです あまり言葉にこだわらない方がいいかと」(98p)
⇒お医者さんごとに見解が違うもののようなので、うつ本人はこだわらない方が良さそう。
大野先生「うつになるのは その人によって必然性があったからだと思うんです
体の防御反応なわけです」(108p)
⇒自分の体が「休め」というサインを出している。無視すると、ダメージが大きくなります。
大野先生「『死』は自己完結です
自分の中のどうしようもない気持ちを自己完結しないで
誰かと共有できたら『死にたい』という気持ちを和らげられるのではないでしょうか」(111p)
⇒その相手を探すのが、難しいこともある……。
家族だとかえってあーだこーだと騒いでしまい、本人が傷つく結果になることも。
親しい友人もいないなら、かかりつけのお医者さんでいいと思います。
◎まとめ
長くなりましたが、他にも参考になる情報が沢山あります。
うつ本人や、周囲にうつの方がいる人は一読をおすすめします。
◎ちなみに
漫画に登場する「編集Y」という女性。
朝日新聞出版の山田京子さん、という方らしいです(あとがきより)。
同社の細川貂々さんの著作の編集担当だそうで。
精神科医・慶応義塾大教授の大野裕さんの共著。
2011年3月、朝日新聞出版発行。現在は文庫版あり。
ツレと貂々、うつの先生に会いに行く ツレと貂々、うつの先生に会いに行く (文庫)
細川貂々さん・「ツレ」こと望月昭さんご夫妻の質問に、
大野先生が答える、という形式で描かれています。
コミック形式で読みやすい、「うつ」の入門書。
細川貂々さん・望月昭さんご夫妻の関連作品の感想はこちら、
大野裕さんの著書の感想は、こちらからご覧ください。
◎おすすめ!
まず、この本はおすすめです。
理由その1。実際のうつ病経験者とその奥さんがインタビュアーだから。
理由その2。大野裕さんが良い先生だから。
なんでそう判断できるか? 肩書きが色々あるからではないです。
18ページでこんなやりとりがあります。
Q「うつ病って、結局何なの?」
大野先生「実はぼくにもはっきりわからないんですよ」
大学教授であり、日本における認知療法の第一人者であり、
様々な学会の要職についてるほどの先生が「わからない」と素直におっしゃる。
小難しい言葉をならべ、中身のない説明をする「先生」もいる中、
「わからない」といえる。
そういう方が手がけられてるので、一読する価値はあります。
◎内容
いくつか、印象に残ったくだりをピックアップします。
大野先生「自分は関係ないと思ってる人がいることです
誰でもなる病気なんですよねー」(20p)
⇒交通事故や風邪は、誰でもならないよう気を付けます。
それと同じように、家族や自分にアンテナをはる事です。
Q「うつ病って体のどこの病気なの?」
大野先生「体のどこが悪いというわけではなく 全体のバランスが崩れている状態なのです」(23-25p)
⇒脳がきちんと働かなくなると、だるさや痛みになって現れます。
自分の場合は、全身が押さえつけられるような痛みで早朝目が覚めることがよくあります。
Q「病気と単なる落ち込みはどう区別するの?」
大野先生「なかなか区別できないんです いつのまに? って感じです
心は他者に見えない 目に見えない物を判断するのは難しいんです」(34-35p)
⇒うつが難しいと言われる理由がここにある。
ついでに、「なまけ」と判断されるのも、骨折や出血のようにはっきり目に見えないから。
Q「うつになりやすい性格ってあるの?」
大野先生「性格よりうつにつながるのは その人の持ってる『極端な考え方のクセ』の方が大きいです」(37-38p)
⇒『極端な考え方のクセ』を矯正するのが、認知療法・認知行動療法。
大野先生「『どうしてなったのか?』と本人も周りもクヨクヨしないことです
『今、何ができるか?』を一番に考えましょう」(44p)
⇒会社のせい、人間関係のせい、両親のせい、などと原因を追究するより、心を休めた方が良いです。
Q「家族はどう接すればいいの?」
大野先生「適切な距離を保ちつつ、過干渉にならないように接しましょう
客観的に人を見られるかどうかが大事なのです
客観的になるのが一番難しいのは 親子という関係です」(52-53p)
⇒実際、親は子どものことになると冷静な判断ができません。
私は実家を離れて療養することを勧められました。
Q「周りにはどう説明すればいいの? 精神論を振りかざす世代には?」
大野先生「わかってもらおうと期待しないことです」(57p)
⇒「うつは気持ちが弱いからだ」などという、昭和の化石は無視した方がいいです。
タチの悪いことに、「薬は毒だ。副作用が危ない」とにわか仕込みの知識でアドバイスする有害な化石もいます。
身の安全のためにも、遠ざかった方がいいです。
「誰だって辛い時がある。私は1人で乗り切った」と偉そうに主張する人も、相手にしない!
たまたま運が良かったか、
助けてもらっていたくせに、自分1人の手柄だと記憶をすりかえているだけです。
大野先生「『どこかで防げなかったのか』と考えだすとつらいだけなので
『今、どうすればいいのか』を考えましょう」(61p)
⇒とはいえ、どうしても考えたいなら、文章にでもまとめてみると良いと思う。
原因の対象、例えば母親を直接責めてもお互い悲しくなるだけなので。
Q「近所の目が気になるという話をよく聞きます」
大野先生「それは本人が『こうあるべき』という考えにしばられているということ
しばられて自分を追い詰めている 『今は自宅療養してるんだ』と思うことです」(68-69p)
⇒骨折などのケガをしている、と考えることです。
Q「『新型うつ』は レッテルを貼っただけで実際には『ない』と思われてますか?」
大野先生「私は『ない』と思ってます 嫌いなんです わがままな人と言ってるみたいで」(70-71p)
⇒主に仕事を休む若者に大して使われる「新型うつ」。
きちんとした医学用語ではなく、マスコミと不勉強な医者が作った言葉です。
そのような病気はありません。
うつや非定型うつには明確な判断基準(DSM-5)がありますが、新型うつにはありません。
新型うつについて書いた本も、おすすめできない……と、私のかかりつけの先生は言ってました。
Q「家族はどうすればいいの?」
大野先生「大事なことは「ちゃんと気持ちをコトバにして言う』ということ」(72p)
⇒「言わずに察する」ことを美徳とする日本人が不得意なところ。
でも、嫌なことは嫌と言った方がいいです。
特に、うつ本人は気持ちを外に出した方がいい。
Q「日記をつけることはどのような役に立ちますか?」
大野先生「考え方に『悪いクセ』がついてる時 それを自覚して良い方に向けることができる」(80-81p)
⇒認知療法、認知行動療法と呼ばれるものです。
うつになると何事もオーバーに、悲観的に考えがちですが、
それを文章化すると矯正できます。
Q「受け入れることもひとつの解決方法ですか?」
大野先生「すごく大事です」(88-89p)
⇒うつ本人は過去に悪いイメージをもっている。
それを聞いて「そんなことないよ」と励まされると、自分の考えが否定され、かえってショックを受ける。
面倒くさいですね。でも、病気がそうさせているのです。
ただ「そうだったんだ」と言うだけで、うつの人は落ち着きます。
Q「病気が良くなった時『寛解』という難しいコトバを使うのはなぜですか?
完治というコトバを使えないのはなぜですか?」
大野先生「私にもよくわからないのです あまり言葉にこだわらない方がいいかと」(98p)
⇒お医者さんごとに見解が違うもののようなので、うつ本人はこだわらない方が良さそう。
大野先生「うつになるのは その人によって必然性があったからだと思うんです
体の防御反応なわけです」(108p)
⇒自分の体が「休め」というサインを出している。無視すると、ダメージが大きくなります。
大野先生「『死』は自己完結です
自分の中のどうしようもない気持ちを自己完結しないで
誰かと共有できたら『死にたい』という気持ちを和らげられるのではないでしょうか」(111p)
⇒その相手を探すのが、難しいこともある……。
家族だとかえってあーだこーだと騒いでしまい、本人が傷つく結果になることも。
親しい友人もいないなら、かかりつけのお医者さんでいいと思います。
◎まとめ
長くなりましたが、他にも参考になる情報が沢山あります。
うつ本人や、周囲にうつの方がいる人は一読をおすすめします。
◎ちなみに
漫画に登場する「編集Y」という女性。
朝日新聞出版の山田京子さん、という方らしいです(あとがきより)。
同社の細川貂々さんの著作の編集担当だそうで。
コメント
コメントする
コメント受付を停止します。海外からスパム投稿が多いため。
この記事のトラックバックURL
http://kodawari.sakura.ne.jp/blogn/tb.php/876
トラックバック
Tweet |
TOP PAGE △