球体の蛇(道尾秀介)感想
道尾秀介さんの「球体の蛇」を読みました。
出版:角川書店、初版2009年11月。



<あらすじ>
十七歳の高校生・友彦は、白蟻駆除を営む「小父さん」の乙太郎、その娘ナオとの三人暮らし。
乙太郎の家業を手伝いながら、漠然と進学を考える友彦だったが、ある日仕事で訪問した家の女性に心を奪われる。
少年と女は、やがて火事をきっかけに親密になるのだが……。

以下、ネタバレ含む感想。






ミステリのようでもあります。
罪悪感に苦しむ人々を描いた、哀しいお話だとも思います。

乙太郎さんは「キャンプ場に娘二人を置き去りにしなければ」と後悔し続ける。
友彦は「サヨに『結婚してあげる』などと言わなければ」と後悔しており、物語が進むとさらに傷を抱えることに。
友彦が恋い焦がれる智子もまた、自分のタバコがキャンプ場での火災を引き起こしたとずっと思い続けている。

物語は友彦の一人称で進むため、真相は実はわかりません。
智子はナオの言葉通り自殺したのか。
知彦が忍び込んでいた家の火事、キャンプ場での火事の原因は結局なんなのか。
何もはっきりしないまま終わります。

これは現実も同じ事で、私たちが身の回りのできごとの真実を知る事などほとんどありません。
ただ自分なりに解釈するだけです。
なんと不自由かとも思いますが、嫌なことを知らずにすむ幸せもあります。
物語の登場人物は、知りすぎたことで深く傷つきました。

ラストが幸せを暗示する終わり方をしているのは救いです。
親子三人に穏やかな生活があることを願います。
| 漫画・本 | 23:02 | comments (0) | trackback (0) |
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