惨殺半島赤目村1(武富健治)
月刊コミックアース☆スターにて連載中の「惨殺半島赤目村」の1巻が出ました。



「鈴木先生」完結後以来、久々の武富さんの連載。
感想いってみます。

<あらすじ>
瀬戸内海に面する陸の孤島・赤目村。
都会の人間関係を嫌い、赴任してきた青年医師・三沢勇人(みさわはやと)は、
着任早々に少女の転落事故に遭遇。
転落をあっさり「事故」で片付けようとする村民に対し、
三沢は「事件」の可能性を探ろうとするが……。

<ネタバレ含む感想>
この漫画を簡単に説明すると、横溝正史などでおなじみの「閉鎖的な村での事件」ものです。

古くからの因習を伝える村。
狭いエリアでの人間関係、欲望。
そして、そこへ現れるよそ者。

ただ1巻では明確に殺しはないので、どう展開するかわかりません。
と思ったけど一話で「連続殺人事件に巻き込まれようとは」って三沢がモノローグで言ってるな。


<第一話「三沢勇人が村に来た日」>
〜船で赤目村にやってきた三沢は、六車村長ほか村民から過剰な歓待を受ける。
分校では歴史マニアの教師・丹沢から守り神である赤目姫のレクチャー。
また、村では開発を押し進める村長派と、今のままの村を残したい青年団が対立していた。〜

普通、若者が急進派、老人は保守派というのがお約束なんですが、
逆にしてあるのが面白い。

お約束のテキスト量の多さは健在ですが、
「鈴木先生」の頃と比べると削っている気がする。
読みやすさを意識してるのでしょうか。

一話にしてかなりの数の人物が登場しているのですが、
頭に入りやすいあたり、さすが書き分けがうまいです。

丹沢と話すシーンで赤目村の地図が出てくるが、
村のある姫ヶ崎半島は、淡路島の西に位置するらしい。
実際にグーグルマップを見ればわかりますが、あの海域に突き出た半島はありません。


<第二話 惨劇の幕開け>
〜三沢は、村の女性・笹間秋奈に村内を案内してもらうことに。
赤目村は陸路がなく、船でしか行き来できない「陸の孤島」だった。
分校に立ち寄った三沢は、仲間はずれにされている少年・耕太から、ただならぬ空気を感じる。
その夜、青年団のまとめ役の逢坂の妹・文江の転落事故が発生。〜

徐々に村の異常性が明らかになる。
他所からやってきた若い女性が集団生活する「乙女小屋」。
あからさまに村八分にされている耕太、瞳の兄妹。

後からわかるのですが、「乙女小屋」は村営の風俗なんですね。
未婚の女性は、誰かに見初められるまで男の相手をしないといけない。
なんと前時代的な……と思う一方、合理的とも思ったり。
若い女性を村で「共有」しているなら、女をめぐる争いが減るわけで。

案内人の笹間秋奈もこの乙女小屋で生活していたそうで……、
これ以上考えるのはよそう。


<第三話 ダークゾーン>
〜三沢の適切な処置のおかげで、文江は一命を取り留める。
この転落に事件性を感じていた三沢。だが県警や村民は事故として処理。
納得できない三沢は、自ら調査を開始。
耕太の高橋家が「谷地」と呼ばれる土地に押し込められていることを知る。〜

武富さんの持ち味の一つが、「表情」だと思います。
端正な顔の女性キャラ、あどけない子どもの表情が、時として激変崩壊する。
それは驚きだったり恐怖だったり色々ですけど、
とにかくインパクトがあるんです。

この三話ですと「事故」で片付ける村民に距離を感じる三沢でしょうか。
四話の泣き出す丹沢も強烈。

「谷地」は、社会で習った「えた、非人」に近いのかな。

<第四話 秘密>
〜三沢は、素手で触ったものに対しその来歴がわかる特殊能力を持っていた。
調査で見つけた耕太の靴と、文江の握りしめていた種のような物体に能力を使い、
誰かが二人を突き落としたことを突き止める。
その夜、笹間秋奈の食堂に集まった村長派、青年団に対し、
三沢は事件の可能性を訴える。〜

三沢にサイコメトリーの能力があることが発覚。
しかし使った後は反動でゲロを吐いてしまうというペナルティ。
このゲロがまたリアルというか……海で吐いて魚が食いにくるあたりが……。

この能力は半ば強制的に動作するらしく、普段オープンフィンガーグローブをしているのはそのため。
これでは女性とつき合う事もできそうにありません。
友達が同じ霊能力者のショウしかいなそうなのも、そのせいか。

ショウといえば武富作品では手塚治虫と同じスターシステムのキャラ。
「鈴木先生」の主人公・鈴木章のほか、
「面食いショウの孤独」など多数作品に登場しています。
作品ごとに結構性格が違いますが、今回は「面食いショウ」のニヒルな感じ。


<雑感>
私は岡山生まれで、母の実家も瀬戸内市内の海沿いにあるので、
この漫画の雰囲気もなんとなくわかるところがあります。

もちろん、母親の故郷は車で移動可能ですし、
女性を共有するような因習も、少なくとも聞いたことはない。
ついでに言うとリゾート地としての開発はそこそこうまくいってる。

ただ、祖父母の家近くをぶらついていた時、
地元の人のうろんげな視線を向けてきたのはよく覚えています。
外部の人間を暖かく迎える一方、そういう態度もあるのです。


<まとめ>
今のところ「軽いジャブ」という気もする「惨殺半島赤目村」1巻。
村の紹介、登場人物の顔見せでほぼ終わった感じです。

古くは「金田一耕助」、新しくは「ひぐらしのなく頃に」、
そういった作品とどう差別化をはかるのか。

楽しみにしてます。


2015/2/28追記
2巻の感想書きました。完結編です。
| 漫画・本::武富健治 | 00:59 | comments (0) | trackback (0) |
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