東藤泰宏「ゆううつ部!」
2013年6月、ポプラ社発行。
小説みたいなタイトルですが、一般人のうつ患者のインタビュー集です。

ゆううつ部!

著者自らもうつ闘病中。
「うつ病患者のコミュニティがあれば」という発想から「ゆううつ部」を作り、部長を名乗る。
認知行動療法を行うサイト「U2plus」を公開するなど、ウェブで活動中。

9人の「ゆううつ部OB」の方々は、どういう経緯でうつ病になり、どう回復したか。
「うつ」を知るのに読むのもいいし、
現在「うつ」の方は、闘病の参考にするのもいいでしょう。

◎構成
1人目 33歳男性コンサルタント
2人目 27歳女子看護学生
コラム1 年末年始やGWは、心療内科の営業日を確認しよう!
3人目 18歳受験女子高生
4人目 24歳就活女子大生
コラム2 あなたの価値は変わらない
5人目 38歳メーカー技術職
6人目 58歳主婦
コラム3 恋人がうつ病になったときにどうするか【その1】
7人目 29歳男性起業家
8人目 26歳元ガングロギャル
コラム4 恋人がうつ病になったときにどうするか【その2】
9人目 50歳男性DTP技術者

イラスト ヨシムラマリ


◎感想
インタビュアー(著者)がうつ患者ということもあり、全体的に共感しやすい内容。
「うつ」を知らない人がやりがちな、無神経な質問がない。

また、時折著者の補足が入るのですが、これもうつに関する有益な情報が多い。

各インタビューは独立しているので、
自分と近い年代の人のものから読むのもいいでしょう。

以下、印象的なくだりをピックアップしてみます。


◎復職プログラム
会社によってはうつ病で社員が働けなくなった時、
少しずつ職場復帰できるように「復職プログラム」を整備しているところもあります。
(中略)
そんな体制が整っているのは、一部の企業や公務員だけじゃないかなあと感じることが多いです。
(17p)

最後のくだりの通り、余裕のある大企業や公務員であれば復職プログラムを利用できるでしょう。
ベンチャーには間違っても期待できません。
制度があったとしても、「お飾り」「外部に対するポーズ」でしかないです。

「就職するなら大企業か公務員」という考えがまだ根強いのは、
上記のようなサポート面もあるからかも。

復職プログラムがなければ、
独立行政法人などがやってる復職(リワーク)支援施設を使う、という手もあります。
それもダメなら毎日決まった時間に図書館などに通う、というのもいい。


◎自己判断で薬を止める
いきなり服薬をやめてしまうと、
反動で離脱症状が出たりするのでよろしくないはず……というのがぼくの理解です。
「自分の判断で薬をやめたら治った」という人もいますが、ギャンブルっぽいのでオススメはできません。
(24p)

薬の副作用の危険をうったえる本も多いです。
年配の方だと薬そのものを信頼しない、という人もいる。
思うだけならいいのだが、例えば子どもに「抗うつ薬なんか飲むな」と言ったりするから始末が悪い。

医者は診察した上で薬を処方してるので、まず医者を信じた方がいい。
素人の無責任な意見をうのみにするよりは、リスクが低いと思いますね。


◎家族の受容
母は私の症状を責めることなくすべて受容してくれました。
黙って「うん、うん」と聞いてくれたり、背中をさすってくれたし、受け止めてくれました。
(51p)

うつ患者の家族のお手本のような姿勢です。
まあ、難しいんですけどね。どんな状態でも受け入れるというのは、忍耐力がいる。


◎回復に、何がよかったか
やっぱり、悩みを吐き出して相談することですね。(123p)

相談相手は、ただ「うんうん」「そうなんだ、辛かったね」と聞き役に徹してくれる人がおすすめ。
「○○した方がいいよ」「△△しなかったからいけないんじゃないの」などと
自説を押し付ける人には話さない方がいいです。かえって疲れます。


◎適応障害
適応障害とは、生活や環境のストレスに適応できず、
身体や心にさまざまな症状が現れて社会生活が難しくなるという、心の病気です。
(137p)

適応障害とうつ病がどう違うのか、正直よくわかりません。

実体験で言うと、私は1つ目の大学病院で「適応障害」、
2つ目の個人クリニックで「うつ病」と診断されています。

本などを読んでも、扱いがバラバラ。
・適応障害≒新型うつ(非定型うつ)としている
Tomy・はじめ「アンタたち治るわよ! ゲイ精神科医が心の病をぶったぎり」
・適応障害をうつの症状のひとつに含める
大野裕・中山和彦・加藤忠史「NHK ここが聞きたい! 名医にQ うつ病のベストアンサー【ポケット版】」

ともあれ、必要なのは病名の意味を知ることじゃなく、
お医者さんによく診察してもらい、薬をきちんと飲んで休むことですね。


◎認知行動療法
うつ病治療に最も多く選ばれている心理療法です。
抗うつ薬と同じかそれ以上の効果があると言われています。
カウンセリング、本、インターネットなどで行うことができます。
(141-142p)

敷居が高いと思うなら、日記をつけるのでもいいと思います。
その日の出来事に対し、自分がどう思ったか、を書いてみるとか。


◎うつと性欲
重度のうつ状態のときには性欲が減退します。
もしくは抗うつ剤の副作用で、男性であれば勃起障害、射精障害などが起こる可能性があります。
(210-211p)

体が「性欲どころじゃない」という感じですね。
うつは脳だけじゃなく、全身に影響があります。
ともあれ、大事なことなので、気になる人はお医者さんに相談。


◎消極的な「死にたい」願望
歩道橋を歩いていて、「ここから飛び込んだら即死かな。
でもちょっとぐちゃっとなるかな、それはやだな、
だったらうまく頭に何か落ちてこないかな」とかいうことを、常に考えている状態です。
(238p)

自分も、歩道を歩いている時に「暴走運転でひき殺してくれないかな」と思ったことがある。
もしくは「明日、核戦争が起きないかな」など。
こういう考えをしてしまううちは、まだ恐い状態ですね。


◎障害年金/障害基礎年金
国民年金に加入している間に受けた病気やケガによって、
「障害の状態にある」とされる期間、決まった年金が支給される制度のことです。
うつ病も対象となります。
(273p)

詳しいことは、日本年金機構のサイトや問い合わせで。
こういう制度があると知ると、国民年金は治めないとな、という気になる。
お年寄りのためだけの制度ではないということですね。
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