高校野球ファンなら説明不要の池田高校監督・蔦文也。とはいえ80年代の「やまびこ打線」も今や昔、池田をリアルタイムで体験していない人も多いはず(私もそう)。
本書はそんな人にこそおすすめの一冊。蔦が池田高校監督に就任してから、甲子園で黄金期を築くまでを丁寧に解説している。
畠山準・水野雄人による夏春連覇、「さわやかイレブン」の活躍は今でも書籍に掲載されるが、それは池田の歴史の「点」に過ぎない。
予選で負け続きの時期、甲子園で勝つための筋力トレーニングの導入、黄金期の源流となった「大和寮」、歴代部長との二人三脚。そこへ蔦の大らかさが加わり、甲子園優勝への「線」となる。
田舎の高校が巻き起こした奇跡を、じっくりと味わえる作品。
一つ難点があるとすれば、蔦本人のインタビューがないこと。著者が取材した98年頃、すでに寝たきりだったのが惜しまれてならない。
☆主に取材をうけている人物
水野雄人、江上光治、井上知己(83年春優勝)
梶田茂生(86年春優勝)
久保士(71年、初出場時の四番)
畠山準(82年夏優勝)
橋川正人(79年夏準優勝)
山本智久(74年春準優勝)
岡田康志(後任監督)
白川進、元木宏、三宅武善、高橋由彦(歴代部長)
監督と甲子園6 頑張れ公立高校!(藤井利香/日刊スポーツ出版社)
海のかなたの甲子園 沖縄・本土復帰への祈りと52年目の全国制覇(市川実/双葉社)
監督と甲子園5 頂点に挑んだ男たち(藤井利香/日刊スポーツ出版社)
蔦文也と池田高校 教え子たちが綴る“攻めだるま”野球の真実(畠山準、水野雄仁、江上光治/ベースボール・マガジン社)
真実の一球-怪物・江川卓はなぜ史上最高と呼ばれるのか-(松井優史/竹書房)
北の球人 元氣、本氣、一氣、佐藤茂富の高校野球(岡崎敏/日刊スポーツ出版社)
監督と甲子園4 輝く個性を放つ指導者たち(藤井利香/日刊スポーツ出版社)
全員野球 中村良隆監督物語(山口真一/一草舎出版)
あきらめない限り、夢は続く 愛工大名電・柴田章吾の挑戦(田尻賢誉/講談社)
阿波の「攻めダルマ」蔦文也の生涯(富永俊治/アルマット)
嶋清一 戦火に散った伝説の左腕(山本暢俊/彩流社)
ハンカチ王子と老エース 奇跡を生んだ早実野球部100年物語(門田隆将/講談社)
監督と甲子園3 人を育てる。すべては未来のために(藤井利香/日刊スポーツ出版社)
Teikyo〜帝京高校野球部と前田監督〜(中里洋二朗/協力・帝京高校)
監督と甲子園2(藤井利香/日刊スポーツ出版社)
炭鉱町に咲いた原貢野球 三池工業高校・甲子園優勝までの軌跡(澤宮優/現代書館)
球聖飛田穂州伝(神門兼之/つげ書房新社)
監督と甲子園(藤井利香/日刊スポーツ出版社)
魔術師 三原脩と西鉄ライオンズ 決定版(立石泰則/小学館)
攻めダルマ 蔦さん -池田高校・蔦文也監督遠望(大川公一/アーバンプロ出版センター・街と暮らし社)
蔦文也のIKEDA行進曲(北原遼三郎/洋泉社)
落ちこぼれの甲子園 横浜高校野球部の奇跡(軍司貞則/講談社)
甲子園への挑戦 高校野球監督列伝[1](徳丸壮也/星雲社/刊々堂出版社)