鉄人・金本が、現役最後の三年間を語った本。
2010年オープン戦前の練習にて、若手と接触して右肩を痛めた金本選手。医者は手術が最善と判断したが、金本は年齢を理由にリハビリのみでの復活を決断。そこから長く苦しい戦いが始まる。
晩年の金本といえば「投げられないレフト」「連続出場記録にしがみついて晩節を汚す」というイメージがある。
とにかくネットのバッシングはひどかった。
本書にもヤジに耐えかね、2010年の時点で引退を考えたと語っている。
しかし、金本選手自身に連続フルイニング記録へのこだわりは一切なかったという。
「チームのためにならないなら」出ないつもりだった。
だが、大記録ゆえにベンチは止められず、ついに自ら申し出ることでストップ。
その後、連続試合出場の枷も外れたものの、肩も打撃も回復しない。
そして2012年、往時の力が戻らず、チームのCS出場の望みも絶たれた秋、引退を決断。
本書の印象はとにかく「苦しみ」に尽きる。
野球について「苦しい思い出しかない。でも仕事だから全力を出してきた」と語る金本選手だが、最後の三年はとりわけ苦しかったのだろう。
この本から「あきらめない素晴らしさを学んだ」などと軽々しい感想は書けない。
ただただ、プロの精神力に脱帽するばかりである。
なお、広島カープ時代と広陵高校時代もわずかだが触れられている。
高校野球ファン的には、広陵時代の恩師である中井哲之(現監督)の証言は見逃せない。
長嶋茂雄 最後の日。1974.10.14(鷲田康/文藝春秋)
人生賭けて 〜苦しみの後には必ず成長があった〜(金本知憲/小学館)
中継ぎ投手 荒れたマウンドのエースたち(澤宮優/河出書房新社)
決めて断つ(黒田博樹/KKベストセラーズ)
采配(落合博満/ダイヤモンド社)
野球にときめいて 王貞治、半生を語る(王貞治/中央公論社)
プロ野球スカウトの眼はすべて「節穴」である(片岡宏雄/双葉社)
伝える わたしが見てきた野球80年(杉下茂/中日新聞社)
愛甲猛のプロ野球ガチンコ観戦ノート(愛甲猛/オークラ出版)
野球を学問する(桑田真澄、平田竹男/新潮社)
スカウト プロ野球の輪郭をふちどってきた男たち(安倍昌彦/日刊スポーツ出版社)
球界の野良犬(愛甲猛/宝島社)
PL学園OBはなぜプロ野球で成功するのか?(橋本清/ぴあ)
絆 冬は必ず春となる(岩隈久志/潮出版社)
133キロ怪速球(山本昌/ベースボール・マガジン社)
投手・桑田真澄の青春(石川好/シンコーミュージック・エンタテイメント)
私の履歴書 プロ野球伝説の名将(鶴岡一人・川上哲治・西本幸雄・稲尾和久/日本経済新聞出版社)
アンダースロー論(渡辺俊介/光文社)
魂のフルスイング(小笠原道大/KKロングセラーズ)
甲子園への遺言 伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯(門田隆将/講談社)
スト決行 プロ野球が消えた2日間(朝日新聞スポーツ部/朝日新聞社)
野球肩・野球ひじを治す本(川島堅/マキノ出版)
背番号三桁「僕達も胴上げに参加していいんですか?」(矢崎良一ほか/竹書房)
もうひとつのフィールド・オブ・ドリームス 伝説のエース 小川健太郎物語(中村素至/新風舎)
左腕の誇り 江夏豊自伝(江夏豊/構成・波多野勝/草思社)
忘れられた名投手-北井正雄と野球のぼせモンたち-(高井正秀/文芸社)
サイレントK 沈黙のマウンド(石井裕也/日本文芸社)
松坂大輔「証明」(降籏学・日刊ゲンダイ写真部/PHP研究所)
友情 オレと仲間のジャイアンツ・グラフィティ(水野雄仁/ザ・マサダ)
巨怪伝-正力松太郎と影武者たちの一世紀(佐野眞一/文藝春秋)