映画「鈴木先生」感想
2011年春、放映されたドラマ「鈴木先生」(原作:武富健治)。
主人公の中学教師・鈴木先生が、学校の正解のない難題に悩みながら取り組んでいく、というストーリーでした。

【ドラマ版】


【原作(全11巻)】


熱血教師とはひと味違う、「異様に悩みすぎる教師」。
問題を起こすのも、わかりやすい不良じゃなくて、一見普通の真面目な子どもたち。
基本はエンタテイメントなんだけど、色々考えさせられる部分もある、いいドラマでした。

ただ、第一話が中学生と小学生がセックスするという、お茶の間どん引きのエピソードなのもあってか、低視聴率に終わりました。
鈴木先生も教え子にいけない妄想するし、これは親子家族で見られません。

そんな、一部に熱いファンを持つドラマが映画で帰ってくる……。
以下、感想です。

まずは、スタッフの皆さんに映画化ありがとうと言いたい。
いい意味で、ドラマと変わっていなかった。

冒頭、しょっぱなから小川蘇美(土屋太鳳)と交際宣言しちゃう鈴木先生(長谷川博己)。
そこへ鎌をもって現れる妊婦麻美(臼田あさ美)。
もちろん夢オチ。
ベッドから転げ落ちる先生を見て、ああ、あのテイストが帰って来たと思いました。

鈴木先生の脳内文字が次々浮かぶ演出とか、陰陽を活かした校内の風景もドラマのまま。

オープニングもおなじみ、生徒が次々メガネをかけていくもの。
ここで笑っている生徒と笑ってない生徒がいますが、笑ってないのは今回話に絡んでくる子たちです(映画では出水とか)。
ここもドラマと同じルールで、とにかく見続けたファンへのサービスが多かったのが良かったです。

<ストーリー>
原作の8巻「@生徒会選挙!!」から最終11巻「@教え続ける」まで。

当然、テキストの多いあの漫画を2時間で収めるのは無理なので、
かなり削られた部分があります。
メインは生徒会選挙で、そこに文化祭準備と勝野ユウジ襲撃事件の主要シーンを絡ませています。

見る前から「生徒会選挙だけでも2時間かかるのに、どうするんだろ」と思ってましたが、
無理なくまとまってました。

脚本はドラマと同じ古沢良太さん。
駆け足でありながら、原作の印象深い場面をきっちりピックアップ。
外してはいけないセリフも外してない。
素晴らしいです。

<キャスト>
キャストの皆さんもお変わりなくて何よりです。
2-Aの面々や先生方に変更なし。

特に子役の皆さんがそんなに変わってなくて良かったです。
すぐに成長して印象変わってくるからなあ。

演劇部の面々はカット。
バラをくわえた役者バカ水木も映像化せず。
彼女を絡ませると2時間オーバーはやむなしなので、仕方ないところ。

生徒会選挙での主要キャラ(南條、青木、西、望月など)も出番なし。
西の役柄は出水がやることになりました。
あと、他の役回りも2-Aの面々が担っているのがいくつか。
ここは賛否あるかと思いますが、ドラマが好きな人にはいいんではないかと。

あとは山セン(山口智充)も再登場なし。
文化祭開始前でストーリーが終わったので。

@小川蘇美
土屋といえばドラマでも色々な意味で体を張ってましたが、映画でも飛ばしてくれます。
しょっぱなの交際宣言に始まり、妄想娼婦。
そして勝野ユウジ襲撃事件で原作通り流血。そしてミルコばりのハイキックにルパン三世ばりの大ジャンプ。
どう見ても届かない気はするが、そこはフィクション。

@出水(北村匠海)
原作の西の役割を担当。生徒では小川につぐ出番がある。
あまり活発でなさそうなキャラだったので、この役割スライドには無理がなかった。

@河辺(小野花梨)
相変わらずおバカ。授業中寝まくり、愛する竹地が仕切る文化祭の演劇だけノリノリ。

@竹地(藤原薫)
相変わらず熱意が空回りしている。愛すべき生真面目君。
鈴木先生が演劇指導する場面はほとんど削られたため、彼が変わって鬼教官に。
原作でいう大谷の役回り。

@神田マリ(工藤綾乃)
出番が少ないながらも印象的。
白井と鈴木先生が話した後の、「言われちゃったね」というセリフは原作よりパンチがあって良かった。
ツンデレを会得しつつある気がする。
でも演説での「あいつら聞いてねェ……」「とにかあくー!!」がなくなったのは残念。
原作読んで一番笑ったのがあそこです。

@中村加奈(未来穂香)
原作でも生徒会選挙以後は出番が減ってしまう中村。
今回の見せ場は「こにょたび」だけ。

@勝野ユウジ(風間俊介)
尺が短いのに、襲撃に至るまでの描写がきちんと描けてました。

襲撃事件はどうしても重い空気になりがちなのですが、
そこをエンタテイメントにしよう、という苦心が見えたのが良かった。
効果音もシリアスというよりギャグだし、
鈴木先生の説得で改心しかけ→と思わせてスタンガンというのもギャグタッチ。

それにしても、卒業して数年なのに中学の学ランが着られるものなのか?
普通、首周りとかキツイと思うが。
でもシュールだったのでヨシ。

@OB白井(窪田正孝)
誰かと思えば大河ドラマの平重盛!
しかし全く気づかなかった。
若き平家の棟梁に対し、今回は元不良。全然オーラが違ってました。
ナイス演技です。

@足子先生(富田靖子)
原作のようなクリーチャー化とはひと味違う、「あちら側にいっちゃった感」が出てました。
「都合の悪い人物は視界からカットする」能力は、結構役に立つかもしれない。

ただ、「私をおやりなさい」が結構普通のシーンだったのが残念。
あそこは「誰がお前みたいな肉だるまとヤるか!」というツッコミのできる原作版足子だから笑えるシーンになったんでしょうねえ。

生徒会選挙で全員投票を提案するのも足子。
公園の喫煙スペース排除を提案するのも足子。
原作ではどちらも違うキャラがやってるのですが、汚れ役はとことん足子先生、ということでしょうか。
ちょっと可哀想。でも出て来るだけで笑えるからヨシ。

<他、印象に残る場面>
@タイトルロール
「LESSON11」と表示。
ドラマの明確な続きだと言ってるわけです。

@校内の喫煙所
川野先生(でんでん)「わたしはもう……キレる若者を心の底から叱りとばす事ができません」
ちゃんとあって良かった。
漫画の枠を飛び越え、大人に投げかけられた名台詞だと思う。

@校門前の勝野と小川
ここで、小川が自分から2-Aだとしゃべる。
水木が出てこないので自分からカミングアウトしました。


<結論>
ドラマ版が好きだった人ならおすすめ。
原作ファンでドラマの改変が納得できない人には、おすすめしません。

東京なら、仕事帰りの人は20時30分からやってる「池袋シネマ・ロサ」がおすすめです。
レイトショーで500円引きだし、お客さん多分少ないし……。
| 漫画・本::武富健治 | 02:12 | comments (0) | trackback (0) |
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