細川貂々「教育オンチが考える 息子の将来、だいじょうぶ?」
2015年4月、平凡社発行。
「ツレがうつになりまして。」シリーズで知られる、細川貂々さんのコミックエッセイ。

息子の将来、だいじょうぶ? 教育オンチが考える

一人息子が小学生になった貂々さん。
周りから「男の子は、正社員にならないと大変」
「そのためには中学受験して、いい大学に」と言われたものの……。

でも いい大学行って正社員になったらどーなるの?
それで息子はシアワセになれるの?
(16,17p)

そこで、色んな専門家に疑問をぶつけてみた、という内容の本です。
子育て中の親御さん向けの本ですが、それ以外の方が読んでも面白いかと。

細川貂々さん・望月昭さんご夫妻の著書・関連作品の感想は、下記にまとめています。
漫画・本 細川貂々/望月昭

◎目次
第1の質問 「中学受験」てなに?/Z会東大進学教室 黒木景子
第2の質問 「大学受験」ってどうなってますか?/株式会社ナガセ広報部長 市村秀二
第3の質問 塾に通わなくても合格できるんですか?/探究学舎塾長 宝槻泰伸
第4の質問 灘校ってどんな学校?/灘中学校教頭 大森秀治
第5の質問 開成ってどんな学校?/開成学園教諭 葛西太郎
第6の質問 男女の脳のしくみって本当にちがうんですか?/脳科学者 篠原菊紀
第7の質問 4人の男の子を育ててみてどーですか?/木山直子
第8の質問 「格差社会」と教育について/法政大学教授 湯浅誠
第9の質問 ロボットと仕事の関係って?/数学者 新井紀子
第10の質問 「発達障害」ってなんですか?/東京大学特任講師 熊谷晋一郎
第11の質問 日本の「社会」ってどうなってるの?/教育社会学者 本田由紀
第12の質問 家族ってなに?/臨床心理士 信田さよ子
第13の質問 「学校」ってなに?/映画『みんなの学校』
映画を観て -「面倒くさい」が面白い(ツレ)

貂々さんのいつもの著書と同様、
各章の終わりにツレさんのツッコミとウンチクが入ってます。


◎内容
最初の「いい大学行って正社員になれば、男は幸せになれるのか?」という疑問には、
最後まで結論が出ていません。
当然です。
貂々さんも誰も、先のことなど見えないのだから。

ただ、本に登場する専門家や教育者の方は、「考えるヒント」を与えてくれます。
そういった種を読む人が心に蒔いて、折にふれて活かす。
そのための本だと思います。

以下、印象的なくだりをピックアップしてみます。


◎燃え尽き症候群
志望校に合格したところで燃え尽き症候群になる子もいるんです
だから、大学へ行って勉強することの意味を考えてもらいます
(中略)
大学受験は夢を叶えるための中間地点だと教えています
(46-47p)

モーレツに受験勉強をやってた子ほど陥りやすいかもしれない。
特に、大学入学と同時に一人暮らしを始める子は、
燃え尽き症候群と孤独感で大学自体に魅力を感じないこともあります。
体験者が書くんだから間違いない。

しかし、高校の時点で「夢」を描くのが難しい子もいる……。


◎孤立しない
孤立しないこと
自分の意見をちゃんと話せる相手、仲間が必要
そのためには人間不信にならないこと。
「言ったってわかってもらえない」と思ったら終わり。
(71p)


◎階級維持
今の子どもたちは
「親と同じくらいの生活レベルを維持できるのかな?」という恐怖心があるんです
(中略)
さらに「なんとかがんばらないとこの生活を維持できないのよ」
そんな不安を親がもっているので 子どもにも伝わってる
今の階級を維持するために 開成に入りたいという人もいます
(80-81p)

賢い子は先を見ようとするので、そう考えてしまうでしょうね。
これなら、多少おバカの方が幸せかもなァ、と考えてしまう。


◎男と女の脳のしくみ
あくまでも平均的な話ですが
まあ、ある程度はちがいますよねー。
(88-91p)

以下、本の図を表にしたもの。

男の場合女の場合
傾向ひとつのことに集中、熱中しやすい共感や推察能力が高い
うれしい時女性をくどいてる時つきあってる男性からプレゼントをもらった時
話を聞いている時言葉の裏の意味やニュアンスを読みにくい言葉と同時にニュアンスや感情、
別のシグナルも読み取る
ストレスを与えると自分の世界に潜り込むよくしゃべる
うまくいっていると
感じる時
パートナーがシアワセそうにしている時パートナーがへこんだ姿をさらしてくれた時

このような男女の差を知っていると、「モテ」ポイントにつながるそうな。
そこで、男の子には表情から感情を読み取るトレーニングをさせるといいらしい。


◎大人がシアワセに生きるコツ
貂々さん「私たち大人がシアワセに生きるコツは?」
「人間は年を取れば みんな幸せになれます
生きてること もしくは過去の記憶が不幸だと思う人は
脳の『記憶の書きかえ』がうまくいってない人なんです」
(94-95p)

記憶の書きかえをするには、新しい神経細胞ができやすい状態をつくること。
それに役立つのは有酸素運動、セロトニン(幸せな気分)、ワクワクドキドキする刺激、
だそうです。

セロトニンといえば、これが不足するとうつ状態になるのですよね。

そういえば、女優の若尾文子さんが
「幸せの秘訣は、過去を思い出さない」ってテレビで言ってた気がする。
成功も、失敗も、みーんな忘れる、ということでしょうか。


◎男の子を育てる人へ
子ども時代を楽しめなかった人が 大人を楽しめるわけがないと思う。
だから子ども時代を大事にして
子どもと一緒に、親も、大人も、もう一度育っていきましょう。
(105p)

これはね、すごく大事だと思います。
「小さいころ、楽しい思い出がない、思い出せない。怒られた記憶しかない」なんてのは、
下手をすると一生ついてまわります。

男の子は基本おバカなんで(勉強ができる・できないとは別)、親御さん(特に厳しく育てられた人)は、
寛容な精神でお願いしたいですね。


◎発達障害ってなに?
138-139pの表をそのまま引用させてもらいます。

自閉スペクトラム症
*かつての自閉症、
広汎性発達障害、
アスペルガー症候群の総称
・人との関わりの障害
・コミュニケーション、人付き合いが苦手
・こだわりが強い
・興味がものすごくせまかったり、行動パターンが制限される
言う事を聞かない
大人の都合のよいようにふるまってくれない
ときに、この2つが本人や家族の意に反して用いられることもある
ADHD
(注意欠如・多動性障害)
・落ち着きがない
・注意の切りかえができない
・注意が持続できない
・行動を抑制しにくい
・今やってはいけないことをやってしまう
学習障害・読めない
・書けない
・計算できない
この3つは合併することもあり、
学習についての困難ということでまとめられている

障害をもって生まれた子に対して、
親や教師は悪気のないまま、
つい「ふつう」を求め、目指させてしまいます。
しかしそれは、本人の心身と個性とのズレを生じさせるだけなのです。
苦しみのもとをつくるだけなので、やめましょう。

「健常」な子に対しても同じだと思います。
(147p)

「普通」ってフレーズは、もう大人は子どもに対して使わない方がいい気もします。
だって、子どもが混乱するだけだし。


◎自己肯定感
日本の子どもは全体的に
自己肯定感
自分に自信がある
大事なことが海外に比べて低い

でもお母さんが働いていると
子どものテキパキ度
ハキハキ度が高く
ボキャブラリーが豊富
自己肯定感が高くなることが多いのです
(172p)

ちょっと後半は疑問。
自分の母親は長年小学校教師でしたが、
自分はどちらかというと、何かともたついて怒られる子どもでした。
なんででしょうね?


◎結婚できる男性
男性がほぼ全員結婚できる時代は
日本の歴史の中ではたった20年間だけ←奇跡!!

明治・大正時代 男性の3分の1は結婚できなかった(経済力のない男は結婚できない)
昭和の高度成長期にはじめてほぼ適齢期の男性が100%結婚できるようになった
今はまた男性の3分の1が結婚できない時代がきている

だから今 男性が結婚できないことは
ぜんぜん恥ずかしいことじゃないのよ
(179-180p)

だそうです。へえー。

言われてみれば、自分より上の世代で、
「よくこんな奴が結婚できたな」という男性がたまにいますね。
家事は一切ノータッチ、奥さんや子どもに対しての言動が乱暴。あるいは無口。
彼らは奇跡の20年間に結婚できた、ラッキーな男だったわけか。

ところで、このくだりを読んである疑問が湧く。
明治・大正時代 男性の3分の1は結婚できなかった

では、明治・大正時代 女性の3分の1はどうしたの?
たぶん、金持ちのお妾さん・二号さんや愛人になったんでしょうね……。
貂々さんは女性だからあえて触れなかったのか、
本筋から外れるから描いてないのか、定かでないですが。
| 漫画・本::細川貂々/望月昭 | 16:15 | comments (0) | trackback (0) |
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