帝京も注目されてはいたが、もっぱら秋の都大会8試合で89得点を叩き出した“恐怖の4割打線”ばかりが話題に上り、エース小林昭則の投球を評価するものはほとんどいなかった。
しかし大会に入るといまひとつの打線を小林が牽引する。先輩で80年春準優勝投手の伊東昭光直伝のシュートとカーブのキレが鋭く、マウンド度胸も満点。広島商戦、東海大五戦はいずれも2−0の連続完封。準々決勝の報徳学園戦でようやく打線が点火、2点リードされた3回に一挙6点を奪って7−2の逆転勝利。
準決勝の池田は鮮やかな足攻で先制した。1回表、1死から出塁した矢島博文が立て続けに二盗、三盗を決めると、関磨のセカンドゴロで生還。これを小林が守りきってスミ1の完封勝利を成し遂げる。1回に死球を受けた右肘を氷で冷やしながらの我慢の投球だった。
反対側のブロックから勝ち上がってきたのは、準決勝でPL学園を3−1で降した伊野商。エース渡辺智男(西武)は清原を3打数3三振に封じた今大会きっての速球投手だった。これで完全に試合は伊野商ペースとなってしまった。渡辺もすっかり本来の投球を取り戻し、6回からは7三振を奪って完封勝利。結局0−4で帝京はまたも準優勝に終わった。
動画:1985年春の甲子園・伊野商との決勝
同年夏は東東京大会決勝まで進んだが、関東一にめった打ちを食らって5−12の大敗。
卒業後は筑波大に進学し、87年の明治神宮大会優勝に貢献。89年ロッテに2位指名を受け入団し、実働7年で0勝2敗。現在は母校のコーチをつとめ前田三夫監督を助けている。
戦績 | 対戦相手 | 打撃成績 | 投手成績 | ||
1985年春 準優勝 |
1回戦 | 広島商 | ○2−0 | 4打数2安打 | 9回3安打 自責0 奪三振10 四死球5 |
2回戦 | 東海大五 | ○2−0 | 3打数0安打 | 9回4安打 自責0 奪三振6 四死球3 | |
準々決勝 | 報徳学園 | ○7−2 | 5打数3安打2打点 | 9回3安打 自責2 奪三振5 四死球4 | |
準決勝 | 池田 | ○1−0 | 3打数1安打 | 9回4安打 自責0 奪三振5 四死球6 | |
決勝 | 伊野商 | ●0−4 | 4打数0安打 | 8回11安打 自責3 奪三振3 四死球2 | |
総合成績 | 19打数6安打 打率0.316 | 44回 自責5 防御率1.02 |