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こだわり高校野球東京都名選手列伝>(11)山口昇

山口昇/やまぐち・のぼる
(右投右打・慶応商工/慶応普通部−慶大)

◇エースで主将は慶大レギュラー◇

 全国中等学校野球優勝大会(現在の全国高校野球選手権大会)は1915年から始まり、記念すべき第1回の東京代表の座は早稲田実がつかんだ。ワセダ永遠のライバルである慶応普通部は雪辱を期して翌年の第2回大会にのぞみ、予選決勝で早実を13−9と降して全国大会出場を果たすと、優勝まで一気に登り詰める。

 チームを率いる山口昇はエース兼主将、また慶応普通部ではなく慶応商工の生徒だった。明確な出場規定がなく「慶応グループの代表だから」という理屈がまかり通る時代、慶応普通部は慶応商工との合同チームで大会にのぞんでいたのである。
 そんな掟破りで作ったチームは当時としては異例の分厚い戦力を誇った。山口の他に新田恭一(慶大−巨人、松竹総監督他)、河野元彦と完投能力のある2投手を揃え、OBで現役慶大生の腰元寿が自在の采配をふるう。

 また山口は慶大選手として大学野球にも出場していた。これもまた「慶応グループだから」という理屈である。「大学の選手も兼ねていたから、相手が小学生のように見えた」と後に山口は語っている。実際1896(明治29)年生まれの山口は、既に20歳で世間的にも成人だった(ただし体格は162、3センチと当時としても小柄で、むしろ俊敏さや判断力などに優れた選手だった)。

 異例ずくめのチームは、全国大会でも並み居る強豪を次々と撃破。特に腰元の投手起用は巧みで、1回戦の愛知四中戦は新田−山口、準々決勝の香川商戦は新田−河野、準決勝の和歌山中戦は新田−山口と3投手をフル活用して決勝まで勝ち上がった。

 しかし、継投策はチーム事情からくる苦肉の策でもあった。予選前に山口は試験勉強と猛練習による過労のため激しい下痢に苦しみ、早実との決勝は打ち込まれて9失点。打線の援護で勝ったようなものだった。全国大会までの2週間を静養にあてたために調整も満足にできていない。そんな状況でも腰元は山口を重要な場面でマウンドに上げ、また山口もそれに応えた。3番としての打撃は大会を通じて好調で、準決勝では9回に試合を決定づける本塁打を放っている。

 迎えた決勝戦、相手の市岡中は9人ぎりぎりのチーム、しかもエースの松本終吉(早大)が準決勝で右肩を負傷しており、捕手の富永徳義が投手、左翼の田中勝雄(早大)が捕手という急造バッテリーで試合にのぞんでいた。

 本来の力が出せない市岡中は慶応の敵ではなく、3回にエラーがらみで5点を奪ったところで大勢は決した。大会初先発の山口は豊富な経験を生かして巧みなコーナーワークと牽制で市岡打線を翻弄、味方の8失策にも動じず2失点完投で優勝投手となった。

◇優勝投手から愛知トヨタ社長に◇

 卒業後は慶大に進んだが中退し、何度かの事業の失敗の末に1927年にトヨタ自動車のディーラーに転身。日の出モータース(現・愛知トヨタ)の社長として、当時外国産に太刀打ちできなかった国産車を広め、自動車販売業界最大の功労者として成功した。創業者の豊田喜一郎、販売担当の神谷正二郎、そして山口なくして今日のトヨタの繁栄はないと言われる。その波乱の生涯は木本正次著「熱球爆走す」に詳しい。

全国大会戦績

戦績 対戦相手 打撃成績 投手成績
1916年夏
優勝
1回戦 愛知四中 ○6−2 詳細不明 5 1/3回0安打 自責0 奪三振7 四死球0
準々決勝 香川商 ○9−3 詳細不明 登板なし
準決勝 和歌山中 ○7−3 詳細不明(本塁打1) 3回?安打 自責0 奪三振? 四死球?
決勝 市岡中 ○6−2 詳細不明 9回3安打 自責0 奪三振11 四死球0
総合成績 詳細不明 17 1/3回 自責0 防御率0.00

【参考リンク】

Amazon:熱球爆走す
(テーマは企業ノンフィクションであるが、選手時代の山口についても触れられている)

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