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三田紀房、宮本大人、藤本由香里、森川嘉一郎4氏のトークセッションまとめ

(2011年6月11日 明治大学駿河台キャンパス)

宮本大人、藤本由香里、森川嘉一郎(いずれも国際日本学部准教授)とのトークセッション。
ほとんどコーディネーターの宮本さんが喋ってました。
個人的には、「クロカン」時代の濃い話が聞けて大満足。

メモを元にまとめてみました。
私の記憶違いの部分があるかもしれませんので、ご了承ください。
また、文中は敬語を省略してますが、実際はもちろん違います。

→目次へ
→第1部 三田紀房氏講演「マンガと生きる力」

宮本
「三田先生のスタイルとして、
(1)顔アップの多用
(2)見開き2ページで決め台詞
(3)例えをそのまま絵にする

がある。
このスタイルは『ミナミの帝王』から三田先生が学んで『クロカン』で確立させたもの。
同じ週刊漫画ゴラクで人気の『ミナミの帝王』を破らない限りアンケート1位はない。
そこで『ミナミの帝王」の見せ方を分析して真似たら、アンケートの票が入った。
98年、クロカンの6・7巻あたりから作風に大きな変化がある。
(ここで7巻『ワシとオオカミ』の見開きを出し)皆さん、言っておきますけどこれ高校野球漫画ですからね(会場笑い)。
また、画風も連載開始時と終了時では大きく変化している。
『クロカン』を読めばスタイルの確立がわかる。」

三田
「(パワーポイントの映像を見て)よくこんなまとめ作りましたね(笑い)。
ゴラクは、言い方は悪いが肉体労働系の人が読む雑誌。ラーメン屋にある感じの。
でもゴラクは業界の認める雑誌。
ジャンプの元編集長は『クロカン』が好きだったのだが、最終巻発売直前になくなった。
お棺に最終巻が入れられたほど。(注:2003年1月に亡くなった高橋俊昌氏のこと?)
ゴラクはマンガの面白さを追究した雑誌で、『ミナミの帝王』はぶっちぎりの人気トップ、ゴラクそのものと言っていい。」

三田
「最初、『クロカン』は月1回連載だったのが、1年続いたところで週刊になった。
その週刊連載前に編集長が『クロカンはダメ。ゴラクではうけない。でも三田さんが描きたそうだから描いていいよ』と。これは傷ついた。
でも新しく代わった担当が『1位を目指そう』と言った。
それまで1位を意識したことがなかった。プレッシャーになるし。
でも原稿を取りにくるたびに1位にしようと言われて、じゃあ努力してみようと。
『ミナミの帝王』は、毎週決め台詞のシーンが必ずあるので、真似ようと思った。」

宮本
「見開きは1巻、『ミナミの帝王』を真似る前からからやってたが?(バカばっかりのチームだな、映像が出る)」

三田
「あれは、月刊なんでインパクトのあるシーンをと思って入れた。
『ワシとオオカミ』は初めてアンケートで『ミナミの帝王』を破った回。
ゴラクでは考えられないこと。
この辺りから普通と違う高校野球漫画と認識された。」

宮本
「絵柄の変化はなぜ起こった?」

三田
「当時、週刊2本、隔週1本を抱え、そのスケジュールの影響。
(2つ目の週刊である)『甲子園へ行こう!』は最初月刊だったが、2話やったところで編集長が週刊にしてくれと言った。
無理だと思ったが、パワーのあるヤングマガジンに連載するのは漫画家として名誉なこと。
今、編集長がやりたいと言ってるのだから今やりますと言うしかなかった。
毎週40ページやるのは無理だが、それは後から考えようと。」
(注:隔週とはイブニングで連載していた「スカウト誠四郎」のこと)

宮本
「斜線による陰影の付け方から、緻密なスクリーントーン・ワークに変わっている。
(『クロカン』と『砂の栄冠』のコマを比較させる)
また、目尻のまつげが特徴的だったのに、『砂の栄冠』では消えている。」

三田
「言われて気づいた。昔はまつげないとダメかと思って。
クロカンの頃はGペン、いわゆるつけペンを使ってて、道具を選ぶうちに仕上げにピグマというミリペンを使うようになったが、これはにじむ。だからまつげを足さなくなった。
原稿用紙も『クロカン』の頃は色々変えており、試行錯誤が『ドラゴン桜』の頃まで続いた。」

宮本
「『クロカン』『砂の栄冠』といえばグラウンド外のリアルさ。
そして身銭を切る、金を払えという思想。
それから『砂の栄冠』に出てくる『黒くなる』という表現についてうかがいたい。」

(ここで、七嶋や七嶋母、小沢部長や遠藤が黒くなるシーンを映すと会場大爆笑)

三田
「あれは1巻の『金ならある』のシーンの顔がなかなか作れず、塗ってると黒くなった。
編集に見せたらすごく受けた。アンケートも受けた。そこで黒くしようと。
受けると思ったら、読者が飽きるまでとことんやる。
キャラの本音が出るたびに黒くする。」

宮本
「『クロカン』『ドラゴン桜』には『てめえで考えろ』という表現が共通して出てくるが?」

三田
「『ドラゴン桜』はモーニングと協力して作ったのだが、担当は『クロカン』の主人公・黒木のキャラをモーニングでも使いたいと。
僕が芸能プロダクションの社長なら、キャラクターは役者。中でも黒木はドル箱役者。
彼にもう一度稼いでもらおうと。
ゴラクとモーニングなら読者はかぶってないだろうし(笑い)。
自分の中ではフォーマットができている。」

森川
『砂の栄冠』3巻の『黒いお母さん』という表現は、とても高校野球漫画とは思えない。
近年、キャラの黒さを売りにした作品が結構ある。
(デスノート、スターウォーズ3などを挙げる)
また、白さを売りにした作品もある。
(冬のソナタ、恋空などを挙げる)
白い作品がないと黒い作品はできない。
三田先生に、こういう世相を反映させる意図はあったのか?」

三田
「ほぼない。
『ドラゴン桜』以降はオファーを受けて描くことが多かった。
『エンゼルバンク』も企業のメディア活用の一環として、ある会社がスポンサーで始まった。(注:リクルートエージェントのこと?)
そういうスタイルは前例がなかったので、やってみようと。
1巻で終わりの約束だったが、意外に受けて長くなった。
しかし、それ(オファーを受けて描く)を続けるとフラストレーションが溜まる。
自分の描きたいものを描きたいと思った。
WBCの観戦記を書く企画があったのだが、サンディエゴで改めて『野球が好きだ』と感じた。
そこで、改めて何が受けるかと考えた。
最初に『朝日を受けた、球児・おじいさん・犬の三角形』が頭に浮かんだ。
(砂の栄冠1巻で、七嶋がトクさん、トクさんの犬と向かい合う映像が出る)
色んな雑誌に売り込んだがモーニングは即却下。
ヤングマガジンに言ったら、数日後に編集長が『昨日は寝られなかったよ。是非やりたい』と言ってくれた。
漫画家の動機として、世相はあまり考えない。描きたいシーンから思いつく。
漫画って、先のストーリーは全然考えない。黒くなるというのも、先に世に出ていた作品に続こうと思ったわけではない。
話があっちこっちへ転がることはよくある。自分もそれを楽しんでいる。」

藤本
「情報収集はどこでやっている?」

三田
「野球漫画の連載が終わっても春夏の甲子園は必ず言っていたが、そこで色んなマスコミの方と知り合った。
その方たちから色々教えてもらって情報を蓄積した。甲子園のネット裏では毎年同じ場所で観戦している人たちがいるが、その人たちの存在も教えてもらって知った。」

藤本
「『砂の栄冠』では、従来の特徴だった『例えをそのまま絵にする』は減っているように思う」

三田
「比喩表現を使うのは盛り上げたい時。
野球漫画では大会が一番盛り上がる。アンケートもガンガン来る。
そんな回に見開きを入れる。
今『砂の栄冠』は秋の大会でガチンコ勝負ではないので、あまり盛り上がっていない。
人間ドラマに重点を置こうと。」

宮本
「(型にはまれのコマを出し)型を重視されるのはなぜ? 剣道とも関わりがある?」

三田
「漫画界への入り方は、自分はアウトローだった。
だからオリジナルにはこだわらない。掲載されることが全て。
真似るのに抵抗はない。最初型にはまるのはいいこと。
しかし、そればかりではサバイバルできない。自分を差別化できない。
日本人の教育というのは型を学ぶことから始まる。
それを加工するというのも日本人独特の価値。
それを何となく表現している。」

三田
「『ドラゴン桜』も暗記しろと言ってるだけで、新しさは何もない」

質問1
「28歳と漫画家としては遅咲きだが、美術の経験は?」

三田
「ないが、図工の成績は良かった。
小学2年生で市内の風景を描くコンクールがあり、ど真ん中に煙突を置いたら賞を取った。
審査員のおじさんが煙突を褒めてくれた。
それから真ん中にでかいものを置くようにすると、賞状はバンバン来た。
子供心にチョロイと思った(笑い)。
自信をつけてくれた審査員には感謝している。」

質問2
「『クロカン』から監督が主役の野球漫画が増えたが、それについては?」

三田
「『クロカン』はデビュー当時から描こうと思っていたネタだが、どの雑誌でも『監督は動きがないからダメ』と言われた。
ゴラクはなんでもいいというので始まった。
『ジャイアントキリング』のツジトモは、『クロカン』を何度も読まされたらしい。
漫画というのは先人のリスペクトから生まれるもの。
もっと色んなジャンルの監督が主役の作品が出てくると嬉しい。」

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→第1部 三田紀房氏講演「マンガと生きる力」

2011/7/16追記
講演内容がiTunesUで全編配信されています。
詳しくは宮本大人さんのブログにて。

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連載当時の単行本(全27巻)
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文庫版(全18巻)
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※文庫版と通常版を混同して買わないよう、ご注意ください。

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各巻420円、全巻11340円