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三田紀房氏講演会「マンガと生きる力」
(2011年6月11日 明治大学駿河台キャンパス)
メモを元に講演の要旨をまとめました。
私の記憶違いの部分があるかもしれませんので、ご了承ください。
→目次へ
→第2部 トークセッション(宮本大人、藤本由香里、森川嘉一郎)
*
<初めに>
受験や就職については何度も講演したが、「生きる力」については初めて。
2部の方が面白いので1部は寝ててもいいです(会場笑い)。
最前列に剣道部の同期がいるが、あまり目を合わせたくない。嫌がらせかな(冗談めかして)。
<明大入学、剣道部入部>
政経(政治経済学部)はたまたま合格しただけで、六大学ならどこでも良かった。
剣道部には2年から入った。自分は面倒くさがりなので縛りや規則の多い体育会に入りたかった。
大変だろうと思われがちだが、それは下級生のときだけ。
<就職>
希望は公務員、できれば岩手県庁につとめたかったが、勉強に挫折。
8月になってようやく就職課へ行き、そこの紹介で西武百貨店に就職した。
自分は人の敷いたレールに乗りたいタイプ。生きていけるならそれでいい。
<帰郷、漫画家志望>
1年後、事情で実家に戻り、兄と家業をやることに。
年々経営がひどくなり、自分は無給。
手っ取り早く現金を手に入れるために、28歳頃に漫画を描こうと思った。
そうしたら入選して、その時50万円の賞金をもらった。
これはおいしい仕事だなと。
当時は店番しながらレジで漫画を描いてた。
編集から「月刊アフタヌーンが創刊されるので、連載をよろしく」と頼まれて描いたのが「空を斬る」。
その後、兄のすすめで上京して専業漫画家になった。
<“便利屋”漫画家>
漫画を描く原動力は特にない。担当に言われたものを描く。
競馬、料理、納豆ビジネス、なんでも描いた。
こういう、注文を受けて描くタイプの漫画家がいなかったので、重宝された。
1つの雑誌できっちり毎週連載している漫画家は3分の1。それ以外は休載する。
休載の穴を埋める必要があるので、その埋め役のポジションにいれば充分食えた。サラリーマン程度の収入はあった。
<初の長期連載>
しかし便利に使われるだけではダメだと思い、週刊漫画ゴラクに「クロカン」を開始、初めて長期連載を完結させた。
それから各紙に連載できるようになり、便利屋から卒業できた。
<連載を開始するには>
そもそも連載をどうやって起こすか。あくまで自分の体験として、次の3通りがある。
(1)編集からネタを提示される
(2)編集の持ち込んだネタと、相談して決める
(3)漫画家自身の希望で始める
(1)は会社として根回しが済んでおり、断りづらい。漫画家自身もやりたくない。
(2)は持ってくるネタの95%はつまらない。あくまで話のきっかけ。
(3)でないと、漫画家が積極的に描く気にならない。
<マンガの作り方>
まずネームを作る、それを編集が見て、次に編集長が見る。編集長がいいと言えば連載に進む。
漫画雑誌には編集長の個性が反映される。それくらい権限が強い。
上記の流れの通り、漫画の連載には会議は一切ない。漫画家、編集、編集長の三者だけ。
映画と比べて個人的、ダイレクト、スピーディ、単純。
<連載は厳しい>
漫画というメディアは簡単にでき、新陳代謝が激しい。立ち上げも撤退も早い。
連載はアンケート至上主義で、アンケートの上位1桁にいなければ危ない。
連載を続けるために漫画家も知恵を絞る。
自分はアンケート重視のタイプで順位も気にする。気にしない人もいるが。
アンケートの結果で話の流れを変えることも良くある。
自分の中に話のフォーマットがいくつかある。
<東日本大震災について>
故郷の岩手県北上市は内陸なのであまり被害はなかったが、とても心を痛めている。
もともと郷土愛はあまりなかった。何もないし、田舎だし。
郷土の偉人・宮沢賢治も貧乏臭いと思ってた。「雨ニモ負ケズ」なんか陰気で、もっと元気な詩を書けと思った。
でも、今は宮沢賢治の言うことが正しいと思う。
冷害や、今回の大震災のように、自然の前には人間はいかに微々たるものか思い知った。
それでも人々は復興に尽力している。
<マンガにできること>
マンガはどういうものを提供してきたか。
少年ジャンプで言えば「友情・努力・勝利」の三原則があるが、子供の頃そういう概念を取り込んだことで、支えになっているのではないだろうか。
じゃあ青年誌はというと、ジャンプと大して変わらない。
子供から老人まで「友情・努力・勝利」が刷り込まれている。
だから復興も頑張れるんだと思う。
日本はそういうものを持つまれな民族。これは誇れること。
マンガが続く限り、そういう心が受け継がれると思う。
実生活に「友情・努力・勝利」の精神を行き渡らせるのがマンガの役割だと思う。
そこは不変。
手塚さんがマンガを確立してからずっと同じなので、自分も今後同じことを描く。
と、うまくテーマに持っていってみました(笑い)。
<最後に>
昔と比べると学生の質が良くなった。私たちの時代なら寝ている(会場笑い)。
*
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→第2部 トークセッション(宮本大人、藤本由香里、森川嘉一郎)
2011/7/16追記
講演内容がiTunesUで全編配信されています。
詳しくは宮本大人さんのブログにて。
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連載当時の単行本(全27巻)
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