“大輔フィーバー”に湧いた1980年夏、もうひとつのさわやかな風が神宮を吹き抜けた。国立(くにたち)高校が、都立として初めて西東京大会を制したのである。
その“都立の星”のエースが市川武史。予選8試合81イニングを投げ抜き、ノーシードから優勝を果たす原動力になった。大会直前にオーバーハンドからサイドに変えたことが奏功し、並み居る強豪を封じ込めた。
国立は予選での打率が0.243と非力で、コールドゲームは0試合。市川にかかる負担はあまりに大きかった。しかも準々決勝の佼成学園戦は1−1のまま延長18回で決着つかず。それでも再試合を6−3で制すると、準決勝では堀越を2−0で完封し、ついに決勝まで駒を進めた。
3連投で迎えた決戦、おそらく市川の疲労もピークに達していたが、声援が大きな力になった。神宮につめかけた観客は大半が“都立の星”を応援し、相手の駒大高はそれに萎縮したか市川から点を奪えない。ゼロ行進のまま迎えた9回表、国立は2点をもぎとると、市川がその裏を抑え都立初の偉業を成し遂げたのである。
念願の甲子園では初戦で強豪・箕島と対戦し0−5の敗戦。卒業後は一浪して東大に入学し、80年代前半の「赤門旋風」に貢献、早大から完封勝利を挙げるなど健闘している。卒業後は会社員。
動画:1980年夏の甲子園・箕島との1回戦(3分頃から)
戦績 | 対戦相手 | 打撃成績 | 投手成績 | ||
1980年夏 1回戦 |
1回戦 | 箕島 | ●0−5 | 2打数0安打 | 9回11安打 自責3 奪三振2 四死球5 |
総合成績 | 2打数0安打 打率0.000 | 9回 自責3 防御率3.00 |