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こだわり高校野球東京都名選手列伝>(3)斎藤佑樹

斎藤佑樹/さいとう・ゆうき
(右投右打・早稲田実業−早大)

◇開花以前◇

 2004年春、群馬県・生品中学から越境入学してきたその1年生は、口数が少なく何を考えているかわからないところがあった。しかし投げる球にはキレがあり、1年ながら宮崎で行われた春季練習に参加。秋からは2年の高屋敷仁(早大)とともに投手陣の一角を担うことになる。彼の名は、斎藤祐樹。

 当時の斎藤は、精神的な乱れが表に出やすいという欠点があった。勝ちたい、抑えたいという思いが空回りして打たれる。また味方のミスが出ると不機嫌をあらわにする。しばしば突如として崩れる斎藤をフォローするため、和泉実監督は高屋敷をリリーフに回して連戦を乗り切ることにした。

「先発斎藤、抑え高屋敷」という体制で挑んだ2005年夏。準決勝まで勝ち進んだ早実は、強打を誇る日大三と対戦。疲労と力みから斎藤は序盤につかまり、また気持ちを修正できぬままめった打ちにされて5回途中で降板。高屋敷が好リリーフを見せるものの、点差を縮められず7回コールドで敗北。
 この試合は斎藤に勝負へのあくなきこだわりを植えつける。後に「自分の野球人生を変えた」と語るほど忘れられない一戦だった。

◇駒大苫小牧との邂逅◇

 同年秋、センバツのかかった秋季大会。準決勝まで進んだ早実は、再び日大三と対戦。斎藤はまるで夏とは別人のような盤石の投球を見せた。容赦ない内角攻めで強力打線を封じ、6安打完封。決勝の東海大菅生戦にも勝利した早実は、18年ぶりのセンバツを確定させた。

 また、地区優勝校が出場する明治神宮大会ではもう一つの宿敵と出会っている。北海道地区・駒大苫小牧。夏の甲子園2連覇を果たした「北の強豪」は、豪腕エース田中将大(楽天)ら優勝経験メンバーを多数残していた。

 早実との準決勝、駒大苫小牧は圧倒的な実力を見せつける。控え投手をたてた序盤こそリードを許すものの、4回途中からリリーフした田中が13奪三振、4番の本間篤史(亜大)が斎藤からライナーでスタンドに飛び込むホームラン。早実はなすすべなく逆転を許したが、これが翌年の名勝負の伏線となる。


動画:神宮大会準決勝・駒大苫小牧戦

◇18年ぶりのセンバツ◇

 翌2006年、春のセンバツ。甲子園初登場となる斎藤は、初戦の北海道栄を4安打完封、上々のスタートを切る(なお北海道栄は、駒大苫小牧が不祥事で出場辞退したために繰り上げで出場している)。

 続く関西戦は点の取り合いとなった。3点リードで迎えた9回裏、無死満塁から安井一平に中越え三塁打を浴びて一挙に同点に追いつかれるも、なおもピンチの場面で後続を断ち、そのまま6回を2安打無失点に抑えて引き分けに持ち込んだ。15回231球の熱投だった。

 翌日の再試合、3回からリリーフした斎藤は疲労を残した体で力投。またもシーソーゲームにもつれ込んだが、1点ビハインドの9回、船橋悠(早大)のライト前ヒットを右翼手が後逸し一挙に逆転。その裏、関西に2死満塁と食い下がられるが、斎藤が安井を捕邪飛に打ち取りゲームセット。24年ぶりのセンバツ8強入りを果たす。

 しかし、2日間で334球を投げた代償は大きかった。準々決勝、握力の低下した斎藤は強打の横浜戦を抑えきれず、早くも3回でノックアウト、3−13と大敗。それでも再登板した6回からの3イニングは無失点に抑え、意地を見せた。

◇夏、ハンカチ王子の大ブレイク◇

 斎藤にとって最後の夏。西東京大会を勝ち進んだ早実は、決勝で宿敵・日大三と激突。斎藤は序盤に3点を失ったものの、1年前にはなかった対応力で修正し、その後は得点を許さない。延長に入った10回表、自らの悪送球で1点を失ったが、代打の神田雄二(早大)、1番・川西啓介の連打で同点。そして11回裏、2死三塁で船橋がセンター前ヒットを放ち、死闘に決着をつけた。


動画:西東京大会・日大三との決勝

 春夏連続で乗り込んだ甲子園で、斎藤の投球は冴え渡った。140キロ台の速球をコーナーぎりぎりに決める制球力、そしてフォークボールと縦に落ちるスライダーで三振の山を築く。1回戦の鶴崎工を13−1の圧勝で下すと、2回戦の大阪桐蔭でも2年生スラッガー・中田翔を4打数ノーヒットに抑えきり快勝。


動画:大阪桐蔭・中田翔との対決

 センバツは「好投手」の枠から出なかった斎藤が、一気に注目されるようになったのはこの頃からだ。涼しげなマスクがファンを魅了し、時折ハンドタオルで汗をぬぐう仕草から「ハンカチ王子」の愛称がついた。

 続く福井商、日大山形と撃破し、準決勝の鹿児島工戦では7安打完封の快投。早実は26年ぶりの決勝進出を果たす。対するは戦後初の夏3連覇を狙う駒大苫小牧。

◇死闘延長15回◇

 駒大苫小牧は、ここまで苦戦の連続で勝ち上がっていた。3連覇を期待する周囲の過剰な重圧、そして全力で立ち向かう対戦相手、何よりエース田中が体調不良で本来の出来ではない。しぶとい打線で逆転しながらの決勝進出だった。

 乱打戦も予想された決勝だったが、観衆が見たのは気迫の投手戦だった。神宮大会の雪辱に燃える斎藤も、3回から登板した田中も、お互いの持ち味を出して得点を許さない。8回表、斎藤が三木悠也(関東学院大)にソロホームランを浴びるものの、直後に檜垣皓次朗(早大)が三塁打を放ち、後藤貴司(早大)の犠牲フライで生還して同点。試合は決勝としては10年ぶりの延長にもつれ込む。

 最大の山場は11回表。駒大苫小牧は1死満塁という絶好のチャンスをつかみ、スクイズをしかけた。斎藤は右目で三塁走者が突っ込むのを察知すると、スライダーをアウトローに外して切り抜けるという離れ業を演じている。捕手の白川英聖(早大)との信頼関係があればこそのプレーだった。

 その後も両投手の好投で試合は動かず、決勝は37年ぶりの引き分けとなった。


動画:駒大苫小牧との決勝

◇再試合を経て伝説へ◇

 試合後、斎藤を激しい疲労が襲った。準々決勝から3連投、甲子園での投球数はすでに830。ここまで全イニングを任せてきた和泉監督だったが、さすがに再試合は控え投手の登板を覚悟した。
 だが一夜明けると、身体は不思議なほど軽かったという。空を掴むようだった右手には握力が戻ってきていた。前日に鍼治療の医師も太鼓判を押していたことで、和泉監督は斎藤先発に踏み切る。

 再試合、斎藤はこれまでと変わらぬ快投を見せる。打線も駒大苫小牧の先発・菊地翔太を1回で降板させ、引きずり出した田中を果敢に攻めて小刻みに4点を奪った。

 6回、三谷忠央(明大)のソロホームランによる1点のみに抑え、4−1で迎えた9回。無死一塁で中沢竜也(法大)に2ランを浴びて1点差となったが、斎藤は動じなかった。この土壇場にあって制球力はブレがなく、球威は衰えを見せない。後続の本間を三球三振、岡川直樹(苫小牧駒澤大)をセカンドフライ、そして、死闘を演じた田中を絶対の自信を持つアウトローの速球で空振り三振。悲願の夏優勝を果たした瞬間、斎藤は拳を突き上げ歓喜の雄叫びを上げた。


動画:決勝再試合

 プロ入りも噂される中、当初の希望通り早大へ進学。東京六大学でもさらなる伝説を作りつつある。

全国大会戦績

戦績 対戦相手 打撃成績 投手成績
2006年春
ベスト8
1回戦 北海道栄 ○7−0 4打数2安打3打点 9回4安打 自責0 奪三振8 四死球3
2回戦 関西 △7−7
(延長15回)
5打数0安打 15回11安打 自責5 奪三振13 四死球8
再試合 関西 ○4−3 2打数2安打1打点 1本塁打 7回8安打 自責3 奪三振3 四死球3
準々決勝 横浜 ●3−13 4打数2安打 6回8安打 自責3 奪三振2 四死球3
2006年夏
優勝
1回戦 鶴崎工 ○13−1 4打数2安打 9回3安打 自責1 奪三振7 四死球3
2回戦 大阪桐蔭 ○11−2 5打数2安打 9回6安打 自責2 奪三振12 四死球1
3回戦 福井商 ○7−1 4打数2安打1打点 1本塁打 9回10安打 自責0 奪三振7 四死球3
準々決勝 日大山形 ○5−2 4打数1安打 9回3安打 自責2 奪三振13 四死球5
準決勝 鹿児島工 ○5−0 3打数1安打1打点 9回7安打 自責0 奪三振13 四死球0
決勝 駒大苫小牧 △1−1
(延長15回)
6打数2安打 15回7安打 自責1 奪三振16 四死球1
再試合 駒大苫小牧 ○4−3 4打数0安打 9回6安打 自責3 奪三振13 四死球3
総合成績 45打数16安打 打率0.356 116回 自責20 防御率1.55

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