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読み切り「それは俺の仕事じゃない」感想

(週刊モーニング2011年4月27日/22・23号)

三田先生が読み切り掲載、となれば1ファンとして買わないわけにはいきません。
例え、アオリが「三田ことないよな読み切り登場!」という激しい不安を覚えるものであっても。
ではレビューを始めます。

机と椅子だけが置かれた、木造のオフィス。机には黒電話がひとつきり。椅子には、モーニングスーツを着た男が、新聞をかぶって机に足をかけている。20年前のモーニングに掲載されても違和感がない光景である。

黒電話がなり始めると、男は受話器をとった。
「荒木探偵事務所」
新聞に隠れていたのは、口ひげを整え、髪もポマードで固めてそうな中年だった。

「浮気か……」
電話の向こうには、夫の浮気調査を依頼した女性がいるようだ。
「そんなダンナは首を絞めろ」
「ああ…… 殺すつもりでな」
「それができないなら 諦めろ」

と、荒木探偵はみのもんたも真っ青なアドバイス。
「そんなものは 俺の仕事じゃない」
そう付け加えると、荒木は受話器を叩き付ける。どうやらこの男、かなり仕事を選ぶタイプらしい。

間髪入れず、次の電話が。
「荒木探偵事務所 何?」
荒木は、ややいかめしい顔つきとなった。今度は受けるのか?

「で 俺に……」
「わかった…… ちょっと待て……」

ここで一旦受話器を置き、サッシの隙間から外の様子をうかがう。
これはよほど重大な依頼のようだ。

「もしもし…… いやなんでもない 詳しく聞こう」
次の瞬間、荒木の両目が大きく開かれる。
やや間を置いて「諦めろ」

「そんなもの知ってどうする かまうな放っとけ」
「人がどう生きようが勝手だ」

依頼はプライベートに関わるものだったようだ。
こういう面倒な問題こそ探偵の出番の気もするが……。

「やだね……」
「娘の結婚相手ぐらい自分で調べろ 人に頼るな」

どうやら娘の恋人の素行調査らしい。
忙しい自分に代わって調べて欲しいというところか?

「娘がかわいいなら仕事なんて辞めろよ」
「バカいってんじゃない 探偵だからってなんでも引き受けると思ったら大間違いだ」
「やるかやらないか 決めるのは俺だ」

荒木探偵、興味の引かれる依頼しか受けないのか。

「そんなものは 俺の仕事じゃない」
再び決め台詞を放つと、受話器を叩き付ける。

と、三度目の電話が。仕事しない割に人気あるな。
「荒木探偵事務所」

「俺が動くと世界は変わる」
「それでどうなろうと責任は一切負わない」

なにこの中二病。しかも、見開きで。

電話の向こうもドン引きしていること間違いなしだが、本人は
「それでも依頼したければ話だけは聞いてやろう」
と大真面目。

「ああ……わかってる……」
「いつかまとめて払ってやる」
「今はない」

大家からの家賃の催促らしい。しかも、払う気なし。
ダメだこいつ早くなんとかしないと…。

「俺が出ていったらこのビルの格が落ちるぞ」
「まあ……待っとけ」

まるで期待できない返事をする荒木。
「たちの悪い自称探偵に居座られています」とOKwaveに書かれてもおかしくないレベルである。

そして最後はやっぱり
「俺は家賃を払うために仕事はしない!」
と電話を切ります。
That's all!(そんだけ)とアオリが入って終わり!

16ページの読み切りですが、要約すると「自称探偵が依頼の電話を断り続ける」だけの話です。
ストーリーまるでなし! というか最後のは依頼ですらねえ。面白いかそうでないかと言われれば、つまらない。
筋道立てたストーリーを作ることで知られる三田先生が、なぜこんなものを書いたのか?

ちょっと前に岩崎夏海さんとの対談で「バスに行き先が書かれるのと同じように、ストーリーは目的地を示すのが自分のやり方」と語っていた先生。
じゃあ、この荒木探偵バスはどこへ向かっているんだ。さっぱりわからん。
口だけで何もしない奴を皮肉った漫画なのか、それとも「できる奴は自分を安売りするな」というメッセージなのか。

しかし、モーニング編集部の方のツイッターでちょっとだけわかりました。

僕のとって今号のモーニングの目玉は、三田紀房さんの読み切り。『それは俺の仕事じゃない』 「ドラゴン桜」「エンゼルバンク」とは違う方向性の作品を生み出すために、色々な試行錯誤と打ち合わせをしてできた読み切りです。
大学時代に、メルヴィルの短編「代書人バートルビー」を読んで、衝撃を受けました。バートルビーのテーマを、漫画で、しかも三田さんが描いたらどうなるのか? その結果できた短編が「それは俺の仕事じゃない」です。ぜひ、感想を聞かせてください!

なるほど。
あえて、普段の自分とは違う作り方で漫画を描いたというわけですね。
あの意味不明っぷり、絵が違ってたら三田先生の漫画とは思えないからな。

思えば、初めてヒットした「ドラゴン桜」が連載終了してはや4年。
それ以後も漫画は書き続けていますが、いまだに世間は三田紀房といえば「ドラゴン桜の人」。
つまり、この読み切りは新たな作風を出すための挑戦だったんだよ!
まあ、主人公は何もチャレンジしてないけど。

この実験作が、今後どういう形に発展していくか非常に楽しみです。
でも新連載という形じゃなく「砂の栄冠」にフィードバックしていただきたい。
どんな作家さんでも連載抱えるとクォリティ落ちるので…。

ところで、こういう作品を映像化するなら小林賢太郎氏がいいですね。
片桐仁氏とのユニット「ラーメンズ」で有名ですが、ソロコントもよくやってます。
That's all!(そんだけ)

読みたかったら金払え!

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※文庫版と通常版を混同して買わないよう、ご注意ください。

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